DELTA-1-
それでも、名前は大事よ。
グリムジョー。
【流星之軌跡 番外編For W.C. With Love:「DELTA-�T-」 クリムジョー+夢主様(as)】
「おかえり、ジョー」
「・・・・・・・・・・・・」
夜しか支配を赦さないこの世界。虚空と絶望の満ちた世界。
この世界こそが俺の故郷。
憎しみや殺戮---数多の死神やら人間やらが恐れるそのものこそ、俺にとっては心地の良いもの。
変化の無い生活なんてちっぽけでつまらなく、何より味気ない。
ここには“楽しみ”がある。だからこそアイツに従ってまで破面になったんだ。
今現世においては“クロサキ”とかいう死神代行がでしゃばってくれてるとかで、なおのこと楽しかった。
・・・ウルキオラのように少しぐらい苛々する奴がいようと、ほぼ全てが俺にとって都合の良い世界だった。
なのに、この女ときたら。
「・・・ジョー?聞こえてんの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ジョー!ねぇ、ジョーってば」
ウルキオラ以上に頭に来る奴だ。
「・・・俺はグリムジョーだ。略すな」
吐き捨てる何時もの問答。押し合いへしあいでなんともうすっぺらいことか。だから早く切り上げたいのに、この
女といったらちっともそれを聞こうともしない。
この女には心の声を読み取る力があるそうだが、本当にそんなものがあるのか?・・・甚だ疑問で仕方がない。
早速、何時もの答えにそれでも嬉々と破顔するんだ。
「ジョーはジョーで、ジョーでしょう?それに微妙な発音って何だか苦手なの」
軽く腰を掛けていた手摺から軽々しく飛び降りて、こっちに歩いてくる。どうせ次になにをされるか、なんてとうに
わかっていて、わざと顔を背けた。
「相変わらず、凄い血ね。・・・っほら、そっち向かないで、ちゃんとまっすぐ見て」
死神の血に汚れた俺の髪やら顔やらを、ぼろぼろになった柔らかい懐紙で拭い取る。
しかし、なんでコイツはやたら俺達を気に掛けるんだろう。アイツの下僕であり、死神であり、そして・・・。
・・・・・・・・・?
何だ。コイツは。
そこで俺はやっと気付く。今まで何時か一緒に生活したことこそあれど、この女についてそういえば何も知らなかったと。
それは知る必要すら感じなかったからだろう。知ったところでどうせ何も出来ないコイツはすぐに死ぬ。アイツも無能
な者は笑って切り捨てるような奴だ。すぐに捨てられるに決まっていると。だから気にもしなかった。
なのにまだコイツは此処にいる。しかもあのウルキオラがこの女の前ではやけに大人しい。それは今思えばまるで従属の
ような気すらして――。
破面でもない、だからといって無能なコイツは、そういえば何故まだ生きてるんだ?
「っよし。はい、綺麗になったよ」
パチンと頬をたたかれて前を見る。満足気な微笑に俺は思考を中断せざるを得なくなった。
・・・考えることはあまり好きじゃねぇが、それでもこれだけは何だか気になる。
あの冷徹な死神がわざわざ生かしておいてる女なんだ。もしかしてこの女は、この俺より強いのかもしれない。
別に、何と言うこともない。
ただ、退屈しのぎになるかと、少しばかりの期待をした。
「なぁ」
「ん?なぁに?」
「オマエ・・・アイツの、何なんだよ?」
少し間が開く。それでも女は笑って、また少しの間の後に口を開いた。
「私は、。皆と同じ、あのお方に仕える存在よ」
頬に当てられていた手のぬくもりが離れる。
「ジョーと同じ」
何故か何も言い返せなくて、そんな自分が馬鹿みたいで、焦って出たのはくぐもった声に無様な反論。
「その名前で呼ぶなって」
だが確かにその瞬間――あの女は言った。
どこか寂しさを帯びた声音で。
「それでも、名前は大事よ。グリムジョー」
今度こそ反論すら言えずに固まる俺を振り返る最後の瞬間、女のいつもの微笑みが少しばかり白い憂いを帯びていたのは、
気のせいだったのか否か。
「それじゃあ、おやすみなさい。ジョー」
この漆黒暗澹の世界。この俺のいるべき、安らぎの世界。
その世界の色を髪に封じこめたかのような、あの女。
生まれたのは死神の世界だろうのに、この世界が好きだと言う、あの女。
今にも泣き出しそうな瞳をして、それでもなによりも安堵したような、柔らかな光を其処に宿す、あの女。
どんなに否定されても、名前を大事にしろと、そう言った、あの女。
俺がアイツの言葉を理解するのに、きっと、少し、時間がかかりすぎたんだ。
『おかえりなさい、ジョー』
俺のことを奇怪な名前で呼ぶあの女は、もう、いない。
了。
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拍手有難うございました!!
今のところは流星之軌跡更新にいそしみたいと思います。初ジョー夢。ジョージョー呼びすぎました。
ヘタレマンセー!(狂)そして名前大事って言うんならちゃんとフルネームで呼んであげようよと
思ってしまったり。なはーん、ダメだこりゃぁ。
日春 琴
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