第十話「儺ヰ腑(knife)」

私は貴方を憎む



貴方は私を嗤う



嗤って 仮面を
いともたやすく 取り去ってゆく



私は貴方を恐れる



貴方は私に触れる



触らないで。
壊さないで。



殺さないで。



そのためには 何だってしてあげるから



だから 殺さないで。




矛盾
理想
髄液



私は貴方
貴方は私



私は私を憎む



濡れた唇
血まみれの天蚕糸
汚れた希望



私は 抱えきれないほどの
それらを抱いて



腐敗して
目玉すら 硝子の破片で突くのでしょう



ぽた ぼた ボタ


嗚呼 貴方 流れる血を止めて



嗚呼 貴方 愚かな私を



音穢(ねえ) 助けてよ





【流星之軌跡:第十話「儺ヰ腑(knife)」】




あれからは藍染に言われた通り、五番隊隊舎に戻っていた。
そして、いつもの面倒な書類整理を黙々とこなしていた。
かりかりと、次から次へと処理を進める音が隊舎内を満たす。

確かに単調な作業ではあるが、あの男のことを考えずに没頭出来るから、
案外これが今の彼女の安らぎであるかも知れない。


さん、さん。あの、これ……良い?」
「はい?」


そんな中突然雛森に呼ばれ、これまた山のような書類を託された。
彼女がいう分には、この書類を隊長に───即ち藍染の所へ持っていって欲しいということだった。
みれば雛森は忙しそうにしているし──やはり藍染の所に行くのは気が引けるが、
それはさっさと報告だけして立ち去れば良い。
藍染としても、自分はもう見掛け上とはいえ彼の手下なのだから、それ以上の接触の必要もないだろう。


それに、自分としても四番隊の台帳について報告に行きたかったところだ。



しかし、この書類の重さは。



何だか今日はやけに書類に運がついているな、とは心で溜め息をつきながら、
彼女を待つ藍染の元へと向かうのであった。




















「藍染隊長。書類をお届けに参りました」


そう襖越しに尋ねれば、すぐに返答が返ってきた。


君か。入りなさい」


その声はあくまでも、「優し」くて。
は彼の底知れぬ野望をそれに見出だした気がした。


「……失礼致します」


加えて隊首席に座って、見上げられると、
まさに自分を見破られてしまいそうで。



だから、藍染の瞳から瞳を逸らした。



それは自分への現実逃避なのか、それとも……。

考えてはみれど、しかし答えは出ない。

自分のことなのに、それすら藍染に管理されている気がするのだ。


そうすると──彼女の思考は面白い程に止まった。
何かを許容しようとして範囲を超えることは即ち「死」をあらわすのだから。
無意識のうちに理性がそれを止めるのだ。



「……凄いな。あれだけの仕打ちを受けておいて無表情でいられるとは」
「………」
「僕の手足となっている今、辛くはないのかな」




わかっていて今更何を言う────。




は憤りを覚えて、しかし顔はあくまでも冷たくして、書類を机に乗せた。


「これは雛森副隊長から、仕上がった書類です。あとは、藍染隊長が許可と
 実印のみして下されば結構だそうです。
 終わりましたら、また私が回収しに参りますのでなるべく早めにお願い致します」


淡々と、そして早口では業務内容を告げてゆく。
その中、藍染は頬杖をつきながらただ黙ってその書類の山との瞳を見比べていた。



「この書類と、こちらの書類は種類が違いますのでご注意下さい。それと───」
「………」
「明日には謄本が手に入ります。
 全ては滞りなく順調。御心配されませんよう」
「───…明日?何か理由が?」
「…………」


この報告を終えたら早々と立ち去ったのに──。


心の中で舌打ちをして、踵をかえしかけたそのままでは説明した。


「謄本を持っている速水雄矢という隊員を本日発見致しました。
 無論、即日回収を狙いましたが、その隊員の管理能力不足で明日までには
 その謄本を見つけだし、持ってくるとのことです」
「………僕は最近の補給間隔を調べてくれ、と命じた筈だが?」



その藍染の問いに、は冷たく笑って──頭だけ後ろを振り返らせた。



「どうせなら全ての間隔を掴んだ方が得策でしょう?」

「────」



藍染は一瞬目をいくらか見開いたが、次には俯きながら低く笑い始めた。



「──くっくっくっ……。いや、……浮竹の調教は案外質が良い。期待以上だ」




───苛立ちは、覚えた。




「浮竹の調教」ではなく、これは私自身の力だと。


確かに彼にはいろいろと指導されてきたが、これは間違えなく自分の力だと。



私だ、と。



しかし───彼に感情をさらけ出すのは何よりも負けのような気がして、
は自分を殺して冷酷な無表情を繕う。


「それでは、私はこれで」
「いや。今日はもう君は下がりなさい」
「────」


────ギッ…


椅子に座っていた藍染が、立って近付いてくる足音がした。
しかしは振り返ることもなく、ただ無心に襖の外を見ている。


「今日はもう疲れただろう。休みなさい」
「…………」
「これは隊長命令だよ」
「…………」


────ギッ…


「顔色が悪い……」



一体誰のせいだ。



は心の中で叫ぶ。



だが、聞こえない。



藍染には、聞こえない。



≪───そんな野暮な用事のためだけに、私の元へ来たのか?……寂しいじゃないか……≫



───グッ……


後ろから抱き締めてくる藍染の心の声は聞こえても、



「……これから、自室へは帰れないと思え。大丈夫だ……不審がる者はいない。
 私の斬魄刀がお前の幻を作っているからな」


後ろから耳元で残酷に囁く藍染の声は聞こえても────



『────私に、触らないで』




自分の声は、聞こえないのだ。





「…………」


≪黙秘───それが新しいお前の抵抗方法ということか。ふん……まぁ、良い≫


何よりも悔しさに塗れた絶対零度の仮面を被るの死覇装を、
いつもの男の手がするりするり、と慣れた手付きで剥ぎ取って行く。


≪どうせ本能には抗えまい。……鳴け、そして無様に喚け。
 私に『犯して下さい』と──請うんだ≫



「………っあ、‥ゃ」



後ろから押し倒され、耳元で熱い吐息をかけられ、胸をまさぐられて───卑しい声を上げる───
の理性はそこで記憶をやめた。



あとは無感情のまま──後ろから彼の、藍染の冷酷な愛情を受けた。



ただ、心を空にして、虚しいままの快楽を。
無様にして下劣で卑猥な、悦楽を───。


その硝子の身体と、未熟な揺籠に、何よりも深く無慈悲な夜と共に。





受けた。




















翌朝、雀の鳴く音に、急に襖の外で騒がしい音が響いたかと思えば、
裏挺隊隊員の影がその白に映った。


「御休みのところ失礼致します!五番隊隊長藍染惣右介殿に緊急伝達!」


何事かと気怠そうに身体を起こし、乱れた白衣装をいくらか正しながら
藍染はそのままで、とひらひらと手を振る。


「はっ。…昨夜夜半、またもや虚の軍団が隊員を襲撃したとのことです。
 場所は、四番隊隊舎付近。夜半のため襲撃された隊員は多く、うち七名は意識不明の重体。
 名前が判明している者は、坂井龍馬、岸野優、斎藤柚葉、そして、速水雄矢の四名────」












慌ただしい裏挺隊隊員の足音が去った後、藍染は隣りで、白衣装のまま横になっていた
の様子を探るように、何よりも優しく微笑んでいた。














───────


流石に裸は寒いかなと(ゥオイ)



間違えなく名前は自分の趣味です。坂井龍馬って、おい!みたいな〜w
なはは、幕末大好きーっw


どうでもいいですが。
私的に後ろから抱きしめられるって好きです。
愛情あっても切ないし、無くても怖くてキチーって感じで好きだしw
やばい、これから、何回後ろから抱かれるんだろうか(爆弾発言)


早く速水編終わらせて風化風葬イメソン話だしたいと思います。
早くガクトからヨン様に変えたいと思います。
そして早くうっきーを出してあげたいと思いますww



ではでは