第十三話「鬼ごっこ。」

『次は彼処だよ』
『今度は此処だよ』



命令される私は そう囁かれて
彼処を きょろり
此処を くるり



今日も忙しく 見回しています。

血走った 綺麗な水晶体で
白濁った 常を
見回しています。



晴天の霹靂。
遺稿の椅子で。
鋭い爪 貴方の背を舐めながら。



ねぇ 私の大嫌いな 御主人様。
御次の命令は 何ですか?



『良く出来たね。御利口さん』
『御褒美だよ。私の心を突いて御覧』


待って。
待って。
そんな 難しくて簡単な命令
私がこなせる訳 無いじゃない。



私の狂った 恍惚とした笑
雨に塗られて 貴方はくすり。


『どうしたんだい。私が憎いのだろう』
『お前だけを殺し、お前だけを犯し、お前だけの未來を強奪ったのは私だろう』



そうよ。
そうよ。
そうして 貴方は私を飼ったじゃない。
両脚の無い私が この深い牢獄から
出れると思う?




私の震える手 貴方を殺める手
血に塗られて 貴方はくすり。



『さぁ、心を突きなさい』
『心行く迄、殺しなさい』


嫌。
嫌。

何故。
何故?


怨んで。
怨んで。



殺して。
殺して。
殺して。
殺して!
殺して!!





殺して‥




──── 殺してよ、私。




【流星之軌跡:第十三話「鬼ごっこ。」】


破壊の夜を越えて眩しいアサが巡って来た。


小鳥が始業を早々と囀り、今の自分には眩しすぎる太陽の光が、襖を通して部屋を満たす。
夕のそれとは違う、白色の揺籠に凭れかかれながら、はまた悪戯に藍染の寝顔を眺めていた。


「‥‥‥」


そこにあるようでない、安らかな顔を確かめるように指でなぞりたいが、気付かれては昨日の二の舞に
なりかねないのでそれはやめておき、代わりに理解を深めるために、今ひとたび憎しみを潜めて。
瞳を優しくして観察することにした。




しかし、わからない。



一体どれが本当の藍染惣右介で、どれが偽りの藍染惣右介なのか。

今現在一番それを知っているのは間違えなく心を読める自分だろうが、逆に知れば知るほど、彼の心を読み、猜疑するほど
に分からなくなってきてしまった。


それはあまりにも自分にとして考える所がありすぎるせいもあるだろうが、彼自身の精神もある。
彼の内面はどこか跳躍し、計り知れない気がする。それは湾曲、というにはあまりに無粋のような気がして、
神々しいというにはあまりに白々しい気がした。


そうではなくて、決してそうではなくて───自身が彼を恨むにしろ、縋るにしろ取り敢えず迸る感情を殺し
て客観的に見てみれば例えばそれは───「崇高」なもののような気さえした。


心を読める自分だからこそ、、また、彼も脳に直接心を染み込ませてくるからこそ、彼の一番の近傍にいる。しかしそれは
脳を染めかえ、いつしか自分の心さえもその距離ゆえに蝕まれてゆくのではないか。
己を殺して出た観察の結果が、その正の感情なのであれば・・・。は改めて彼の強大さ、そして計り知れない思略の
深遠さに身を凍らせる。
これは、この感情はまさしく―――「絶対教育」の賜物なのかもしれない。



だとしたら、自分は、は何処にいるんだろう。

は誰を憎み、誰を信じ、愛し、哀しむのだろう。

この感情は、誰のもので、誰のためのものだろう────……。




戸惑う儚い少女を捨て置いて果てしなく、今日も朝の柔闇は去って逝く。







「おはようございます、藍染隊長。 ……藍染隊長?」
「────!?」



誰────。


襖の外から癖の有る軽やかな男の声が響いて、は身を縮ませる。
そして咄嗟に「隠れなければ」と判断した自分に、何故という疑問が浮かんだ。



「もしもーし、藍染隊長?……アレ、もしかして寝とります?」
「──────。」



何故隠れなければならないの?



私はこの人の宿敵で。
この人は私の宿敵で。



ここで外部の人が私を見つけてくれて、私が藍染の謀反を全て語ればそれで終わる。
彼はすぐに捕まり、四十六室無き今、代わって重國様や刑軍、もしくは統治する王族が直接罰を下される。



無論、大逆人藍染惣右介は極刑断罪。



そして朽木ルキアは保護されて、旅禍は有るべき世界へ戻り尸魂界は再度平穏を取り戻す───…。



私と藍染は、密偵と大叛逆人。
元々憎み合う存在。
殺し合う運命(さが)。
それが生まれ持った宿星なのよ。



でも、なのに、それなのに─────。



何故私は今、必死に彼を庇おうとしているの──────?



「仕方ないなぁ。入りますよー」
「……っ!」


そうして彼女が何も出来ずに藍染の隣りで立ち尽くしていると、ついに襖が勢いよく開かれた。


双方の驚きに戸惑った顔で、は入ってきた男を凝視する。
すると、勿論の如く男はに驚いたようだ。


「君は…………」
「───あ‥っ」


男の細い眼から瞳を逸らすことも出来ず、唯固まった。


しかし、言わなければ。



五番隊隊長藍染惣右介は世界に謀反を企てていて、全てを越えようとしている。
そのために四十六室は抹殺され、皆は幻に犯されている。
そしてそれを知った自分は囚われ、ことごとく酷い罰を受けた‥ということを。


「君は………?」


幸い藍染はまだ夢の中。
目の前の男を見れば白羽織。慌てた今確認までは出来ないが何処かの隊の隊長だろう。



これ以上の好機はない。
言わなければ。



言わなければ─────!!


「あ、‥あ、のっ!助けて下さいっ!」
「え?」
「藍染惣右介は大罪人、謀反を企てています!!
 こんなこと唐突に言ったって信じていただけないことは承知していますっ!
 だけどとにかく、今は何も聞かないで、一番隊山本隊長の元へ走って下さい!!
 隊長がお仕事中でも『凪呈すからの緊急伝令』と伝えれば大丈夫ですから、
 だから、走って!!!」


鬼気迫る形相で銀髪の男に叫び、立ち去れと促すが彼は事態が飲み込めないのかを見な
がらぽかんとして、そのままだった。



「何をしているの!? 早く走って! 御願い、走ってっ! 伝えて!! 藍染惣右介は大罪人なの───!!!」


すると、漸く男は飲み込めたのか僅かに踵を帰しながら遠慮がちに聞いてきた。


「君は?」
「私は大丈夫。 なんとか食い止めてみせるから。 だから、早く───!!」



そのまま手を払い、早く行けと促すがしかし、途端───踵を返しかけた男がまた再び
こちらを向き直してしまった。



「は、早く───!!早く行けぇえっ!!!」



今更何をしている。早く行けというのに。


は怒りすら覚えて彼を罵倒するがしかし───。



「ごめんな、ちゃん。君、助けられへんわ。
 だってボク、鬼やもん。
 鬼は逃げる子供を捕まえなあかんやろ?」



そう無表情で言ってから、彼は、にっ、と唇を歪ませた。
何よりも愉しそうに。


残酷に。


それは見た事がある。



「いやァ、スゴイ自信やなァ。 ───ですって、藍染タイチョウ」


くすくすと笑い声を立てて、パチパチと手を叩く。
何が何なのかわからなかった。




ただ、分かるのは────刹那、己が首に宛てられた冷たく鋭い感覚────。


「──────」


後ろから刀をの首に宛てながら、『彼』も銀髪の男と同じように笑った。




「芝居とは、ギンも大概趣味が悪いな」
「あれれ。ドナタかに似たとちゃいますやろか?」
「はは。 言ってくれるな」



何食わぬ顔で話し合う男。
後ろから刃で脅す男。
そして共通する狂った微笑み。



『鬼』。



まさか────。




「ま、さか……お前───‥な、仲間‥‥っ?」


「ピンポーン♪」



震えた唇で問うと、銀髪の男はそう答えた。



───希望は捨てた。
筈、だった。



しかし、まだ絶望を感じるのは未だ浅はかだったからだろうか。それとも、覚悟が足りなかったからだろうか。




「さあ、。今この状況でどうやってお前は私と互角に戦い、時間を稼ぐと言うのかな?」


驚愕に茫然とするの後ろから、衣擦れの音がやけに耳についた。



「───愚かだな。 第一、お前が万が一時間を稼いだとしても、私の計画に気付けなかった者を、
 私がむざむざ逃がすと思うのかい?」


カチャリ。
斜めに宛てられていた刃が、今度は喉笛に横に宛てられ、光を放ちの驚愕に満ちた表情を明るみに曝した。


刃に、冷たい汗が伝う。
ドクン、ドクン。
抱かれ馴れた男の心音が聞こえた。
逃げ場は、なかった。



「………」




怖い─────。




ただ、ただ、そう思う。


次に藍染が口にする言葉は何なのだろう。
間違えなく────恐ろしく苦しい、苦しい『躾』だろう。


けれど、


『ごめんなさい』


は出なかった。



「いいかい、? 教えてやろう」
「・・・・・・」
「『仲間』とまでは呼ばないが、少なくとも『協力者』は必要なんだよ。 私の悲願を大成するにはね。
 ……諦めろ。 お前が知らなくとも、協力者など世界に五万といる」
「・・・・・・」


『だからこそお前は逃げられないし、代わりなど幾らでもいるんだ』────そう心の中で囁かれて、
は苦痛に瞳を歪ませた。
すると、目の前の銀髪の男は何か発見をしたかのように反応した後、藍染に何かの許可を取った。



一体何をたくらんで────。



そう思った刹那、の脳内に爆音のような不協和音がぶち撒かれた。



≪初めましてちゃん。ボクは市丸ギンっちゅうんや。よろしゅうな。
 ……これでも一応三番隊隊長なんよ。 こりゃ、えっらい『ビッグスキャンダル』やろ?≫



「────いっ…い、や‥」



ドクン。



ふと、市丸の心声を聞いたは呻きを漏らした。
そしてまた、何故、という声があがる。


「便利ですねぇ、彼女ホンマに心の声が聞こえるみたいで」
「だからこそ崩し易い」
「ホンマに。 ……て、あれれ。 どうやらボクは嫌われてもたみたいやな」


市丸の心声が頭に響く度、キンキンと頭が痛くなり、そして気持ち悪くなる。
かえって、藍染の心声はなんともないのに。


これは何かの警告音なのだろうか。


「んん〜〜〜〜っ……!」
「嫌ァッ、やめて‥‥ッ! 入って来ないで───っ!!」



バキン、バチン!



なお一層市丸が声を出そうと念じれば念じるほど、悪寒と痛みは増す。
思念と闇に脳が握り潰されそうだ。
もしかしたら、もう耳から血が流れてしまっているのかと錯覚するほどに。
キィンキィンと、苛みは増す。




「っ!」
≪────


「止めろ、ギン」



ふと、後ろからいつもの声がかかり、それを聞いた市丸は至極つまらなそうな顔をして念じるのを止める。
はそのまま、乱れた呼吸を落ち着かせるかのように後ろの藍染に凭れかかった。



「はぁ‥‥っ、はぁ‥はぁ…っ」



熱にうなされているかのように、身体の底から寒気と気持ち悪い熱気が這い上がってくる。
そんな意識が朦朧とする彼女に、なおも刀を宛てながら支え、藍染は市丸に用件を問う。


ぼんやりする頭で聞くところ、また何やら「計画」が進んだようだ。



「じゃあ、ボクはこれでお暇させてもらいます。 また朝からイヅルにどやされたぁないんで」
「あぁ、そうしてくれ」
「‥つい珍しかったんや。ちゃん、堪忍な? ……じゃ」



─────パタン。



最後に申し訳なさそうに市丸はに言葉を残して行った。


しかし、言葉とは裏腹にその声音は弾んでいて、最早逃げ場はないとは悟る。




「はぁ‥‥はぁ‥‥」
。……
「はぁ……は……」



ふと、藍染の声が「笑った」ような気がして、は堅く閉じていた瞳を明ける。
すると、すぐそこには藍染の胸板があった。



自分は後ろから刃を突き宛てられていた筈なのに、何故────?



「自ら縋ってくるとは、一体どうしたものかな?」
「!!」



────その時、初めては自分が藍染の胸にしがみついていることを知った。


恐怖の冷や汗を流して、かたかたと震える肩を預けて────手はしっかりと、
藍染のはだけた白衣装を握りしめていたのだ。



「私としては良い目覚めだ」
「‥‥‥‥」



にこりと───柔らかく、狂気に微笑まれた顔をまじまじと、驚愕のうちに見つめ、の唇は自然と動く。



「ご・・めん、なさ……」



するはずも、言う筈もなかった言葉や行動が─────震えを伴って紡ぎ出される。
そんな自分に彼女は戸惑うばかりだった。


「あぁ、密告のことか」


どんな罰が待ち受けているのだろう───そんなものを受ける義務はないと叫びながら、彼女は恐怖に怯えた。
その恐怖は、罰への恐怖か、はたまた───『捨てられる』恐怖か。


わからないが、唯今は『怖か』った。



「罰など無い」


「───・・え・」

「私は、与えないよ」

「・・・・・」


信じられない。この男の真意を探ることすら息を呑んで忘れてしまう。驚愕した表情ではそのまま藍染の瞳を凝視する。


そんな筈はない、絶対に何かしら罰はある筈なのだ。今迄そうやって、散々罰を受けて来たではないか。
歯向かう度に、時には口に出来ないような辱めを受け、時には直接腹を蹴られたり、叩かれ殴られたりといった暴力、
酷い時には肌を切り刻まれた時だってあった。

目には目を、歯には歯を。

可逆はありえないその絶対倫理で、この男は蹂躙し、嬲り、玩び、『教育』してきたのだ。


実験体という血塗られた生のなかで、叛逆などもってのほかだと。
そう完膚無きまで教えてくれたのは、紛れも無い藍染自身なのに。



――――――その彼は、罰を与えないと言う。


…嘘だ。
絶対に───嘘だ。
はなおも固まったまま瞳を伺う。



すると、ふう、と藍染は溜め息をつき、から離れて持っていた刀を鞘に納めた。



「私は罰を与えない。 信じなさい」
「・・・・・・」



立ち尽くすを無視しながら、藍染は乱れた衣を正す。
まるで何もなかったかのように。
むしろ、機嫌良さそうに。




そして微笑みながら、を振り返って言った。





「おはよう、





朝日に照らされた美しい笑。
縁取る蔭。
暖かい共奏。




───何とも、醜い朝だった。







※※※※※※




いつものように、は足早に四番隊にかけつけた。
門番に挨拶を交わし、長い廊下を渡り、豊かな庭園に気を許しながら、奥まったあの部屋を目指す。


「失礼します。です」



────ガラッ



そう、安らぎの場所───速水雄矢に会うため。


「……て、あれ?・・・」


はすぐに速水を捜すが、姿が見つからなかった。
そういえば昨日からあれだけ大層に繋がれていた点滴が外れて彼は自由になったのだ。
しかし、いくら治りが早いとはいえあれだけの重傷を負った彼にはまだまだ安静が必要だ。

昨日あれだけ注意したのに、「そんなに心配しなくても、の熱心な看病のお陰で大丈夫だから」
と言うだけで、やはりあれは生返事だったのかと、今更ながらは溜め息をつく。


「仕方ないな。……」


気配りの上手い彼ならどこに行くか。
はすぐに思い当たり、その場を後にした。
















「………と、これがここで、この決算書はあそこで……」


四番隊隊舎、速水雄矢自室、資料保管庫────
の思った通り、彼はそこで仕事をしていた。



「雄矢さん」
「…で、この記録は四か月前のだから……古いな……」
「────…」


病人である自身の立場も、の気持ちも知らないで何を呑気に仕事をしているのか。
と、仕事に熱中して呼び掛けを無視されたは、少し彼に悪戯を思い付く。


すると彼女は含み笑いを浮かべて霊圧を消し、後ろからひっそりと近付いた。



そして資料に埋もれて紙面と睨み合いをする彼の後ろから───大声を立てた。



「ゆーうーやさんッッ!!!」
「うっっわぁああぁああぁっっ!!??」


そこまで脅かすつもりはなかったのだが───思いの外速水は仰天し、弾みで椅子から転げ落ちて
その身体は資料の海に溺れてしまった。


─────ボスンッ!
バサバサバサ…!



「ゆっ、雄矢さん!?」


まさか本当に資料に溺れるなど知らなかったは、慌てて速水の手を力一杯に引く。


「んーっ!」
「──────っぷはぁ!!」
「はぁっ、はぁっ……良かった、雄矢さん・・」


漸くのことで速水を救出して、は参った、とうなだれる彼に笑った。



「ぷっ・・あはははっ」
「わっ、笑うなよー! 俺だってドキドキしながら仕事してたんだから…!」
「ふふふっ…でもだからって、あんな驚き方──っくくく・・っ!」



けらけらと腹を抱えながら笑い声を立てる彼女にみとれ、そんな自分に苦笑を漏らし、しかし紛らわす
かのように照れながら咳を一つ落とすと、何かに気付いたのかハッと顔をあげた。
そしてすぐに、机に置いてあった書類を纏めはじめた。


「──何のお仕事をしていたんです?」


笑うことに疲れた、というように溜め息を吐いて問うてきたに、速水は早口で答えた。


「残してた四番隊分隊の仕事だよ」
「ふーん…そうですか・・」
「!」


───バッ!


しかし、が覗きこもうとした瞬間──速水はその纏めていた資料を咄嗟に隠してしまった。


何か自分が見てはいけなかった機密資料なのだろうか。


「あ。と、……・・ごめんなさい」


しかしそうが謝ると、速水は慌てて首を振った。


「う、あ、えっ、いやっ! ち、違うんだ! 別に怪しい資料とか、やましい春写真とかじゃなくて……!」
「はい。 信じます」
「・・・・・・・・・・・・」


なんだ。


冗談を交えた話だったのに、それすら彼女は知らないようだ。
何と彼女は純粋な娘なのだろうか。


速水は出鼻を挫かれた気もしたが、しかしそれ以上に彼女が可愛く思えて何も言えなくなってしまった。


「……驚かしたことは悪いと思ってますけど。 まだ貴方は病人なんですよ。 仕事熱心なのは良いことですけど……」
「いや。 俺は仕事はあまり好きじゃあない」
「え……そんな筈ないですよ。 じゃあ何でこんな抜け出してまで……」
「それは……」


そこまでで、速水の口は止まった。
まるで、これ以上言っては勿体ない、というように。


とにかく何でもない、と自棄に明るい声音で笑った。


「はぁ。 ‥‥変な人ですねぇ」
「お互い様だろ?」
「ふふ」


はらはらと、未だ舞う資料の薄紙は、まるで光の羽のようで、その中で二人は声を立てて笑った。
特に何も、特別に楽しいことなどない、日常光景。
しかし、それだけでもにとってみれば涙が出る程楽しいものだった。


一方速水も、この時を寸秒も惜しむ程に感じていた。
と過ごす時間が、何よりの良薬──不思議な心の高まりはあれど、最初のうちは罪悪を感じたそれも、
今では守りたい掛け替えのないそれになっている。


「…じゃ、に見つかっちゃったことだし、戻るか」
「はい。 戻って下さい。 何でもお世話してあげますから」
「さんきゅ。 あ……でも料理は勘弁な」
「あ。 ひどーい! あれでもちゃんと料理本見て作ったのに……」


素直に拗ねる可愛いの頭をぐしゃぐしゃと無造作に撫でて、そのまま速水は自室を後にする。


去り行く廊下には反発するの声と速水の笑い声が、響いていた。










「───────‥」









しかし、その廊下を、男が見ていたことは未だ誰も知らない。












───────



はい、第十三話でした。
ようやくギンが登場・・・とのことで、ようやくうっきールートの兆しが見えてきたかな、という
感じです。
最初は藍染ルートからですけれどw


「春写真」=(外来語でいう)エロスなグラビア写真のことですねw
しかしただ純粋なは春写真そのものを知らないので、あー、春の季節の写真なのかな?なんて
速水の冗談にのんきに構えてますw


・・・さて、早いものですが。
そろそろ速水編最終話が参ります。

そして、それからちょっと紆余曲折あり・・・ようやく個人ルートに入れそうです。
・・・まだまだ長いですけどねー^^;


・・・これからに安楽はあるのだろうかw
いや、あります!はい!
いちおハピエン予定なので・・・。


しかし・・・テーマが難しいな、相変わらず・・・!


ま、まぁ頑張りますw


では。