第二十三話「誓いなさい。」



【流星之軌跡:第二十三話「誓いなさい。」】





光は、粒。
光は、波。
光は、
光は、
光は‥‥‥‥






‥‥‥絶望。




仕組まれた夜に、慈悲などない。
互いに覚悟と駆け引きのまま、夜を越したのだ。
結果負けた者は大切な部品を失い、勝った者は負けた者が失った部品を征服する。


何も知らない幼子を殺めるのなど至極簡単なことだった。やはり宝は使わなくては意味を成さぬ。
ならばそれを使い手として、自分が操ってやれば良いのだ。



自分の宝に捻り潰される気持ちは、どう?





「───ぁあっ、あっ」



瞳の色すらなくして、彷徨う手はすぐにでも肉にすがりつく。
まるで生まれたての小鹿がすぐにでも立ち上がるかのように。



そうさせたのは自分だ。
理性という分厚い鋼を引き剥し、本能をむき出しにさせたのは、自分。


そうして、いつも勝ってきた。



無知な子供を────蹂躙した。







「‥‥‥流すな」





え、と目の前の茶色い瞳が見開かれる。



「・・・お前は裏切らない」
「・は、あ‥っは・・・」



そのまま瞳を歪ませ細い指を腕に絡ませる仕草も、全て計画通りだった。


なのに、何故。



「涙など・・・流すな」



以前なら甘い期待に少しばかり息を止めたはず。
それをせずに足を絡ませるのも、全て計画通りだった。
全ては、順調、だった。


「はっ・・・あ、藍染・・・隊長‥‥‥先を・・・」



気高き女司祭が最も憎い冒涜者に濡れた両足を開き、せがむ痴態。
全て、思い描いた構造。




それなのに、彼女の瞳から流れる暖かな涙に、なによりも────────





苛立つ。





「熱‥い‥‥くるし、い・・・っ藍染、‥隊長、さ、先、を・・・っ」






涙に濡れる長い睫毛。









─────バシンッ









誘う様に揺れる白い手を振り払い頬を殴り付ければ、
何日か前に受けた衝撃に、彼女は漸く瞳を開いた。




「・・・ど、・・して‥‥」

「‥‥‥‥」

「わたし・・・裏切らない」

「‥‥‥‥」

「わたし・・・隊長に捧げたから・・・路を歩かないと‥‥みんな・・・さようなら、だから・・・」

「・・・・・・」



脳を退化させたのも、自分。
絶対愛の恐怖と、覆した倫理、理性で雁字搦めとまでに塗り込めたのも、自分。



それなのに、熱に浮かされたように呟く唇を見つめれば、そこはぬらぬらと光り輝いていた。





きら、

きら、

きら。



光は──────絶望。




暖かな涙を見せるのは。







苛立ちは涙に更に増し、無表情にそれを滲ませる。






暖かな涙を見せるのは。




「涙など、流すな」

「・・・・・・」



絶望としか映らない光を彼女は今、眼に蓄えて、今度は恐れおののいた。
元の精神に戻りかけたのはなによりも不服だったが、
暖かな涙を流されるよりかはそちらのほうが随分良いような気がする。




「有限などに、固執するな」


まさか、この少女に?
そう思ってから頭を振る。





───まさか。





この少女は自分が調教して育て上げたのだ。




自分の都合の良い様に。
ある時は奴隷、ある時は使徒、ある時は唯、欲の掃き溜めとして。



手中をふとみればそこにはさらさらと流る抱えきれないほどの壊れた部品の透明洪水。

やはり、全ては、計画通りなのだ。






────なのに、何故。






≪・・涙など、どうでも良いだろう≫




捨てる様に、反芻させる様に、藍染は吐く。




「私は‥・・固執なんかしてない・・・全て捧げたはずです・・・」

「いや、しているな」

「してない」

「しているからこそ、涙を流すんだろう?唯溺れていれば楽だというのに」

「・・・・・・」




まだ荒い息を抑えきれずにいる少女───は訝しむ。
何を言っているのかと。
確かに海に光を架けるために今は生き長らえているが、裏切ることなど諦めたのだ。


海に帰る、その為なら。


離反など出来ない。




「裏切らない・・・私は・・・貴方だけは、裏切らない」



「嘘を吐くと、殺すよ」



「────嘘なんかじゃ、ない────」



「・・・・・・・・」






宝は時として荒馬のようだ。


己が秘められたそれを拾いあげて一度捨て、また拾いあげた時には
手を噛まれるのだとしたら、宝とは何とも不可解な利器なのだろう。



「私の心を読め」



≪────────≫



ぐにゃりと複雑に絡まり合う振幅だけの感覚に、は力無くふるふる、
と頭を横に振るだけだった。



クスリと笑って、そんな彼女の肌に、仕置を一つ。




「────っァアァ・・!!」



すぐにでも殺せるように、と常備してある床上の刀。
彼女の手に名も無いそれを持たせ、突き出た鎖骨に長い緋を引いた。
生きた肉を引き裂く感覚に、微かに鈍さを感じれば、それは骨に達したことを物語る。

痛みに喘ぐのはまだ早い。


血が噴出す傷口を舌で無理やり押し広げ、血を嚥下するかのようにゆっくりと舐め上げた。





「───────」






そうすれば、ほら。




あの暖かな涙は消え失せる。




「‥それで良い。さぁ‥」




取りあえず苛立ちは緋に消えるのなら、それほど脅威ではないだろう。
遅れてやってきた征服感に唇を歪ませれば、の中で蠢いた。



「何が、欲しい?」



誘発するように、弱く。




餌でつれば獣は懐くから。





「あっ・・ん・ぁ、‥ゼッ‥たい‥ちょ‥‥ぅ────」




そうだ。




そういうふうな瞳をすれば良い。



光など、映すな。







“ 光 は ────── 絶 望 だ か ら ”









 ≪ 貌在るもの、など ≫





 “ 卑 し い 貌 な ど ”





・・・涙、など。






自然と頭に浮かぶ言葉─────ああ、また苛立つ。





光が眼を通って心を照らしてゆくようだ。
彎曲するそれは質が悪く、隅から小さく、ジリジリ焼き尽くすように燻る。




快楽に溺れてしまえば、この苛みから逃れられる?





「アッ・ぜ‥‥ぃ‥ちょ‥ッ!!はっ、あ・・・あいぜ、ん・・っヤァあぁあッ・・・ぁああぁ!
 あ゛あ゛っ!んーっ!!」





涙を流す度、傷を増やして。
傷でこの滑らかな身体を埋め尽くしてしまえれば、苛みから逃れられる?




「いっ・・たい!やめ、・・て・・・!いや・・・っぃやぁア゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ーッ!!」











ああ、それでも──────



お前の作る血溜りにも、光が宿るよ。







‥‥‥それなら。





「・・目をっ・・た・ァあ‥っ」




なら、瞳さえ閉じてしまえば。




ほら、




愚かなお前と私しか、いない。




あの醜い光は─────やって来ないから。





「・・・瞳など」











頭の中に熱い傷ができた。
散々な夜。





それなのに、必ず焦燥に追われる夜。






微笑さえ埋もれる。





そんな、夜だった。







※※※※※※





身体の気怠さも慢性化してきて、もはや朝などどうでも良かった。
ただ、以前より闇は衰えているだけで、時の進みはまだない。


時間感覚の無い中で、今日もまたは仕事をこなす。
雛森から下された命の一部分、主に書類整理をこなしてゆく。
今も印が捺された書類を五番隊に持ってゆくために廊下を歩いていた。
ただ、今隣りには雛森自身がいるけれど。


その雛森が、ふとの顔をちらりと窺って来た。



「・・・」

「・・・は、」

「・・・っえ!?」

「あ・・・いえ、あの‥‥私の顔に、何か」



困ったようにそう尋ねれば、雛森は一瞬困ったような顔をした後、おずおずと訊いてきた。



さん‥‥‥好きな人、できた?」



「‥‥‥‥‥‥え」




喉の奥でくぐもった声がした。
同時に微笑は固まる。



「何故、そうなるんですか」
「だって、‥‥最近、凄く・・綺麗になった、から・・・」



雛森は笑いながらも表情は真剣そのもので、話を進めてくる。



「それに、最近‥私に・・・」





≪私に対して冷たくなったから・・・≫




────。




心を探り、思い付く。
そして自分の不甲斐なさを笑う。
もっと上手く偽らないとと、彼女の態度を目の当たりにしながらそんなことを考えて、
どこか呑気に構えて。



言葉を待つ振りをして、は立ち止まる。
すると、それを見て気付いたのか彼女は「私、何言ってんだろう」と茶化す様に大声で笑った。



「────大丈夫ですよ」

「え・・・」

「私は決して届かない場所を、愛していますから」



ぎくりと雛森の顔が固まる。
しかしすぐにの言葉によって元の彼女の表情に戻った。



「叶わないものを、私は・・・願ってしまうんです」
さん・・・」



言い淀む彼女の心には、かつて四番隊にいた男が浮かぶ。
彼女が知り得る情報の中で彼を浮かべるのは確かにもっともだが、
しかしの中に浮かぶのは違う。
彼も勿論、海の一部として輝かせたい。


だけれど、浮かぶのは──────





『十四郎様・・・』





心の中でかみ締めるようにその名を呟く。




大丈夫、ここだけは誰にも侵されない。




「さ、もう隊舎は目の前ですよ。変なお話は終わりにして、
 さっさとお仕事終わらせちゃいましょう」




瞼を開けて、きちんと前を見据えて。



海へ光を架けられるなら、闇をも甘んじて受け入れましょう。




軽やかに踏む足取りに、雛森は一瞬遅れて続く。
無粋を恥じらう彼女を愛でて思わず笑えば、彼女も申し訳なさそうにくすりと笑った。
















「藍染隊長、お持ち致しました」

「ああ、有り難う雛森君、君」



雛森と少しばかり他愛も無い話をして書類を届ければ、
中でそれを待ちわびていた藍染が二人を部屋へと招き入れる。



「隊長、ここに置いておきますね」


そう言って雛森は整頓された物置に書類を置くが、さすが藍染といったところか。
昨日あれほど大量に渡した書類まできちんと残さずに片付けていた。


だから彼にとって特に忙しい、という訳でもないのだが、
それでも雛森は世話を焼きたいらしい。
運べる、という藍染の言葉をかたくなに遠慮して置いてしまった。




「やれやれ、雛森君は全く頑固だね」

「隊長はいつもお忙しいんですから、このくらい当たり前ですっ。
 少しくらい・・・お役に立ちたいんです」





雛森の照れた言葉が発せられた時─────。









≪──────≫




「────」



─────ドクン。



雛森に続き物置に書類を置いていたの胸が───



───ざわついた。




心の声が、心の波が。





震えた、気がして─────バッと藍染を振り返りみれば、
くすりとほほ笑まれる。



「君は十分、役に立っているよ。それよりも、自分を大事にしなさい」



真っ赤になって俯く雛森。
優しく微笑し、彼女の頭を撫でる藍染。





見比べれば、




死神をみた気がして。











訳も分からず、瞳が震えた。










さん」



最早逃げるようにしてこちらに戻ってきた雛森を
再び目に映せば、視界が歪んだ。




『 ニ ゲ テ 』



副隊長は、役に立つ。
それに、心酔しているなら尚更。

利点だらけだ。


だったら。




だったら──────。






さん?」


雛森に死覇装の裾を引かれ、漸くは我にかえった。
不安そうな顔が目に入り、呼吸を落ち着かせようとするがしかし、
まだドクンドクンと妙な胸騒ぎは止まらない。


血の巡りが鈍くなり、しかし鼓動は加速する。






「どうしたんだい、君」





また聞こえる、霞む声。





いつもならはっきりと聞き取れるのに、最近靄がかかったように波しか感じられない。
おそらくは彼が霞ませているのだろうが、ならどうして読めと強要する?
は疑問符と汗を張り付かせながら藍染を見上げた。




「はは‥どうやらまだ僕は君に嫌われているようだ」




恐怖は、無い。



なのに汗が吹き出すのは、何故。



雛森が苦笑する横で、はぎこちないまでの微笑を浮かべて、
無言のうちに藍染の言葉を待つ。



「そうそう‥‥ちょっと君、来てくれるかな」

「は‥‥‥」

「この機密書類を十三番隊隊舎に届けに行くんだけれど・・ちょっと沢山あってね。
 雛森君は、今持って来てくれた書類を重要度別に纏めておいてほしい」

「はい、了解しましたっ」

「我慢してくれよ。雛森君しかこの重要な仕事は出来ないんだ」



「雛森君しかこの重要な仕事は出来ない」の一言に生き生きとし、
書類を纏めにかかる雛森の後ろで、にこりとほほ笑まれて、行こうと促される。



しかし何故か脚はぎこちなく固まっていて。
脚に力を入れているはずなのだが、どうも動こうとしてくれない。



「こっちだよ」



いよいよ、どうしようと焦った時、藍染に言われては雛森から目を背ける
かたちになった─────と、その時、ふと脚が浮いた。





身体が動き出したのだ。
漸く───身体が、言う事を聞くように。
ひとまず息をついて彼の背中を追う。



胸騒ぎは置いて。
感情など彼の前では必要ない。
彼は自分の幸せなど望んだことはないのだから。






息を吐いて、廊下に出る。


彼は無言だった。



今の貴方の表情は、どうなっている?


非常に気になった。


何故、あの時“笑った”のか。
声が震えたのは、何故。
脚が竦んだのは、何故。
語りかけてこないのは、何故────・・・やはり、何かあるのかもしれない。


今まで藍染は心を強制的にまで読ませて、を征服してきた。
心の声は通常の声にくらべて格段と頭に響き、同時に強い思念の波が胸に押し寄せてくる。
そしてその感覚は身体に染み付いてゆく。


そこを彼は知っていた。
いや、本来死神がそのような能力を有していればそうなることは予想は出来るのだが、
彼はその点においては他の死神よりも勝っていたのだ。



破壊と絶望を考える彼だからこそ、気付いていた。
純粋で高潔なものこそ、移ろいやすい存在である、と。



だから、に読ませて、移ろわせたのだ。
の倫理、の希望。
全てを、彼色に。



「・・・・・・」



しかしそこまで覚悟をしていなかったでもない。
浮竹のもとにいた頃から他人の心が悟れると知っていたも、能力の危うさに気付いていた。
時には敵に同情してしまう時だってあった。
だが、まだその時は理性があった。自制が利いた。


愛すべき人のためなら、罪悪だって背負えた。




しかし、今は違う。



何故。




「・・・・・・」



目の前の白い背中は、遠い。

同じ白の羽織りなのに、どうしてこんなにも遠いのだろう。





どうして、“あいせ”ないのだろう。





移ろいやすいと、忘れかけていた大切なことを再認識させてくれたのは、
間違えなく藍染なのに。




自由にさせてくれたのは、藍染なのに。




高潔な道へ導いてくれたのも─────全て。





は、ぎゅ、と手を握った。




血の薫りに安堵を感じる理由がわかった気がして。
汚物を振り払うかのように目を背けていたものがちらりと顔をのぞかせた気がして────。



そして、渦巻いた考えを振り切るかのように頭を振って、
廊下に面して広がっている庭を眺めた時────死神が、自分達の前からやってきた。


手には自分達と同じく大量の書類の山を抱えて小走りしていて、とても忙しそうだ。
腕章を見ればやはり十三番隊で、は納得する。
しかし、それは同時に不幸な知らせを彼女に知らせることになった────隊員があのように忙しなく
働き詰めになっている、ということは、おそらく最近、彼の体調も優れていない。




「・・・・・・」





でも、いつか。





はまた、手を硬く握った。




は信じていた。



いつか、彼を助けることが出来ると。




『待っていて下さい、十四郎様。私が海に帰る頃には、
 きっと・・・病からも解放されますから』




貴方を苦しませる病さえ、消してみせる。




貴方だけじゃない。





この世に存在する、全ての人の苦しみさえ───払ってみせるから。





「・・・・・・」



握っていた掌を解放して、は前を見据えた。
しかし────



なかった。




先ほどまであった白が、






ない。







「・・・!」




どうやら考えこんでいた隙に、藍染は隣りを歩いていたらしい。
小さく、優しく囁かれて、はびくりと肩を震わせた。

そんな横を、先ほどの死神が会釈をして通り過ぎようとしていた。



こんなところで、親しく名を呼んでいれば怪しまれるだろう。
自分達の関係の露呈は、即ち野望の露呈。


は、まさか彼が死神の存在を欠いているはずはないだろうとは思いながら、
咎めるように首を振る。




目の前、すぐに死神がいる。




なのに─────。









執拗に、名を呼んで。




呼ぶ声は、誇張するように大きくて。





「えっ────」





バサバサバサッ─────・・・・






一瞬、何が起きたのか、わからなかった。





ひらひらと、几帳面に感情の無い字が連ねられた膨大な枚数の紙が舞う────視覚。

バサリバサリと軽く、乾いたものが床に落下する音────聴覚。


腰と背が暖かいもので触れられ、抱き締められ、唇に柔らかなものが押し当てられて
ぬるりとざらついたものが入ってくる感覚────触覚。


爽笑な風に混じる嗅ぎ慣れた、男の薫り────嗅覚。


甘くて苦い、纏わりつく唾液の味────味覚。






確かに五感は冴えているのに、頭が働かない。




冷たすぎて、働かない。





「んっ、ふ・・っ!っい、ちょっ───うん、んん・・ッ!」







 み ら れ て 、 い る 。










────ドクン。





「・・・・・・っ」




廊下を擦る足音が止まった。


───驚愕しているのだ。





あの有名な隊長が、名も無い女死神と接吻を交わしている光景に。
まさぐるように手で背を擦り上げる男の手に、知られざる蜜月を感じて。







・・・───」




荒い息から漏れる名は、二人しか知らない秘密の名。




頭の中に、言葉が浮かぶ。








『 お 前 は 、 裏 切 ら な い 』







≪  ≫




─────サァ。






≪お前が大好きな、 ジュウサンバンタイ だよ?≫













  ──── サ ァ 、 


       オ ユ キ ナ サ イ 。










───ザッ‥






死神が漸くそそくさと走り出す音がした。




「んっ、んんんーッ‥‥────」







─────待ッテ。






現実世界のはずなのに、小間切れに世界が入り込んでくる。



冷たい血が巡る鼓動が、五月蝿い。




「ア‥‥っ!はぁっ、はぁっ・・!!」





漸くのことで抱擁から逃れた。









死神ガ、角ヲ曲ガル。







  ネ ェ 、 待 ッ テ 。









 「 待 っ て ──────」










────ドタ、ドタンッ!!






目の前には、死神の怯えた顔。



最期に見た顔は、最早驚いた顔では、なかった。














────ゴキン。









首が、拉げて折れた。







後ろで口を拭う男は、満足そうに笑っていた。









しなだれた屍体は、白い紙をぐしゃりと潰した。









「ハァッ、ハァッ、はぁっ、はぁっ、はぁっ─────」















生きたいのなら。









涙など、流しては、ならぬ。









暖かい、涙、など。










貌あるもの、など。



















──────────────


誓いが解ければ、それは即ち野望の露呈。
洗脳、教育の破綻となる――間違っているはずがないのに、焦る藍染さん。

意味不明な言葉も出てきて、ちょっと転機だったのではないでしょうか?
最後はまたひどい命令だったけれども――だって浮竹隊長はなによりも部下思いですからねー。
自隊の部下の誰かでも誰かに殺されたとなれば非常に憤慨するはずですから・・・。

ですが、藍染にはさからえない。
逆らったところでそれは海への路にはならないのです。はい。

断罪編もあとわずか!そしてようやく見せ場になっていきます。
お付き合いくださいませ^^