第四十一話「藍実食みて亞酔木煉せば―al decontrol―」


風に吹かれて、馬酔木の花が揺れている

その枝垂れながら鈴のような華はくすくすと 音を立てて

まるでその様子は 小さな童が 笑っているかのよう

そんなことを思っていれば――――――ああ、今日も天井から 鬼ごっこをしている声が聞こえてくる

目の前で揺れている 白の顔と重なって、



「私も、一緒に遊びた『かった』なぁ」



だって  『毒』で麻痺した身体はちっとも動きやしない

喋ったって 夢中で遊ぶ者たちに聞こえるわけない

完璧に隠れた鬼なんて 見つけられるわけないよ。

寂しいよ。

とっても。

・・・さみしい。

でも、きっと、いつか。

お父様やお母様が迎えに来てくれるから。 それまでの辛抱だよ。

膝を抱えて今日も、真冬の寒さを凌いだ

そこで初めて気がついた



私は膝を抱えられる・・・抱えている!



そうしてはじめて 目の前が碧色に祝福されていることに気がついた。

一体、どうして?

考え込んで、思い当たる



そうだ、



お前の冠す名は――――――。








***









血の滝だ。


なぜかは分からないが、飽和限界を迎えた脳でそんなことをぼんやりと思った。


今まで狂気の色を滲ませていた茶はぐるんと反転し白目を向く。己の剥きだしの腹は滝壺で、
どうどうと緋色のなだれが振動と共に伝わる。その源流落つ場所は同じ色に染まり輝く鋼色が、
冷たく顔を覗かしていた。
それがひょっこりと顔を引っ込ませると同時に、体重がぐんと増して肺を潰してくる。おそらく心臓
を一突きされたのだろう。即座に体中の筋肉は弛緩し、支えを失った。
息苦しさに呻く。すると、上流にあったであろう鋼は弧を描き、抜かれた反作用で今まで自分を
苦しめていた元凶は床に転がった。だらしなく横たわる様はまるで人形のようだった。

一体何だったのだ。

机から半身を起こしてその人形を見る。
瞬時、固まった。
今まで知っていた男は、知っていた『筈』の男となったからだ。つまり―――今まで自分を玩んで
いた者は、


「―――っ・・・」


ひたり。

冷たい感触が喉元に突き当たり、ようやく目の前に注目する。すぐにそうするべきだった。しかしそれを
せずに床を確認したのは現実逃避のためだったのか、そうではないのか。最早刹那的すぎて判断は
つかない。


「惣右、介・・」


今や死体と化したあの人形の暖かい血液が喉元に流れ、そして胸の谷まで朱色の川を引く。今自分の
命を滝に突き落とすことのできる太陽は、絶対零度の眼光をもってを見下していた。









【流星之軌跡:第四十一話「藍実(らんじつ)食みて亞酔木煉(ころ)せば―al decontrol―」】








「まったく、とんだ逸材だ」


死んだはずの男は今、に刀を突きつけていささか落胆に嘆息を吐いていた。


「そこらへんにいる虚のほうが有能だな」


身動ぎしようものならカチャリと鍔が鳴る。朱に塗れた鋭い切っ先は、窓から入ってきている月光に照ら
されて今にでもの喉笛を突き刺す機会を伺っているようだった。


「惣右介・・・主、」

「貴女に発言権を与えたつもりはありませんよ、様」


ぐ、と喉に硬いそれが押し付けられて、は反射でこみ上げてくる咳きをなんとか飲み込む。これで
咳き込みでもしたら間違えなく薄い皮は破れて、中から漏れでた液体は胸に落ち行くそれと同化する
だろう。
結局何も出来ずに、ただ目の前で残酷なまでに無表情な男―――藍染惣右介の言葉に耳を傾けた。
藍染は片手で悠々と死の刃を突き当てたまま、の顔のすぐ横に置いてある古書を見る。それは先
ほど彼女が見つけた「禁」という大きな判を表紙に付けた本だった。


「―――ひとつだけ、褒めておきましょう。 私には何故、鏡花水月の完全催眠が解けたか未だに分か
 らぬのです」


は虚を付かれた、といった様子で藍染をうかがう。彼は続けた。


「・・・訳が分からぬといった顔つきをしていらっしゃいますね。 なら、この藍染めがご説明致しましょう」


微動だにできない状況のまま、藍染は今までの経緯を話し始めた。


「まずは質問にお答えください。 ―――いつから、『入れ替わった』ことに気がつきましたか?」


入れ替わった・・・?は追いつかない頭を必死にめぐらせてみる。藍染は確かに入れ替わったと言った。
その言葉が真実だとすれば彼は誰かと―――そう、予想がつくなれば今無残にも筋肉を痙攣させて転がって
いる男と―――入れ替わったということか。ここ何日かの間何度か違和感を覚えた時はあれどしかし、それは
一種の友情のようなものが芽生えてきたものだとすっかり思っていたが、それは勘違いだったということか。
いや、そのような可能性を考えなかったということはなかった。不自然な優しさは、藍染に何か裏の思惑があって
のことかと思った時はあったではないか。


そうか、やはり、そちらだったか。


「気づかれていらっしゃらなかったようですね。 ・・・なら、さぞかし残念でしょう。 貴女の信頼する『藍染惣右介』は、
 端から存在などしていなかったのですよ」


藍染の目はすっと細められ、どことなく愉しんでいるようだ。


「貴女がご覧になられたように、何を隠そう私は禁忌の研究をしております。 死神の虚化、虚の死神化、そして
 王族居住地区への鍵、『王鍵』の捜索・・・他にも無数の研究も並行して進めております。 ・・・要は、貴女の
 ような『普通の』倫理観を持った人物に見られてはいささか、危険なものを研究しているのです」


どんな顔をしているのか。その色を良く見たい。そんな声が聞こえてくるようだ。
刀身に反射した光を傾けて、の白い顔を暴きながら、なおも演説者の雄弁は続いた。


「この刀の本当の能力は『完全催眠』。 今大成しそうな研究があるために外出を禁じましたが、周囲の者には大規模な
 戦をけしかけ、虚征伐という名目で完全催眠にかけたので近隣住民にはこの研究棟はおろか、戦の舞台となった
 村さえも見えておりません。 その言葉は嘘・・・・・・貴女が逃げないようにと先手を打っただけにすぎません。
 そして初めて貴女があの枯渇しきった庭園に出た時、私はあらかじめ命令しておいた虚にわざと貴女を襲わせ、そして
 貴女は刀を見、その能力下に陥った・・・」

「・・・・・・・・・」

「実際貴女は萌芽した草を、枯れた草と見紛った。 今その身体の隣に置かれている禁書にも目もくれなかった。
 故に―――私は確信し、ここに私の幻をかけた部下を置き、ここ何十日の間は十三隊に戻っていたのです。 
 けれども・・・・・・計画は狂った」


藍染の視線はふっと離れ、未だに生きようとして痙攣を繰り返す男を見下す。その色は間違うことなく侮蔑を含んで
いる。幻を身にまとっていた頃とは違って体躯のしっかりとした中年の男は口から血の泡を吹きながら、先ほど食し
た内容物を無様に垂れ流していて、気道から漏れてくる空気はぼこぼこと音を立てて、助けてくれと虚しく叫んで
いるかのようだ。額とはいわず全身には脂汗がじっとりと滲んでおり、痛みに声を上げるに上げられずにただ血走る
眼球から涙を流すばかりだ。月以外の照明は皆無で、床には暗闇が充満していたが不思議とその様子は手に
取るように分かってしまう。


「この愚かな男のせいで計画は狂った。 あれほど貴女との接し方を仕込んでおいたのに、全く、遺憾です」


そう落胆のため息を吐いた途端、男は唐突に叫び声を上げた。その言葉は途切れ途切れで語尾もはきと
しなかったが、どうやら何者かの名を必死に呼んでいるようだった。
藍染はその必死の様子に小さく声を上げて笑い、そして、すっかり不思議そうに小首を傾げた。


「おいおい、今更赦しを乞わないでくれ。 ・・・裏切ったのは君だよ? 君は裏切ったんだよ、君の安否を気遣い今日
 も待つ妻も、子も、そして路頭に迷っていた君を拾ってあげた私をも」


血に塗れた手は必死に空を掻く。最早意識すら危ういのだろう。目も見えていないのだろう。ここがどこすらもわからない
のだろう。
ただただ狂ったように背を海老反りにして、今まで塞がれていた傷からは防波堤が決壊したのごとく鮮血の洪水が音を
立てて床の色を塗り替える。ずりずりと這い回って、胴体の通った後は彼の命色の轍ができた。
そんな様子を見て、藍染は何の表情もしなかった。ただそこに害虫がいて、設置しておいた自動殺虫容器にかかって
もがき苦しんでいるのを確認したような、そんな感じだ。



「殺しなどしない。 そこで煉獄の苦悶をじっくり味わって、いつか来る焉りをじっと、恋焦がれているといい」


またこちらに視線が戻る。一瞬、冷徹な微笑みがを捉えたが、それはまた狂気の超低温のそれへ元通る。


「ああ、申し訳ありません、話が途切れてしまいましたね。 ・・・まぁ、聡明な貴女様はもうおわかりでしょうが。 この男には
 私の一連の行動、所作、嗜好等を覚えこませてここに住まわせました。
 彼に課した命令は二つ。 ・・・一つは、大事な客人であらせられる様の保護、そしてもう一つは―――貴女と親密に
 なり、警戒心の類を無くさせ―――ある情報を聞き出すこと」


「・・・・・・・・・」


「私自身がその役目を担っても良かったのですが、彼に任せました。 彼は妻子を持ち、なにより忠実で、そして誠実
 だったので」


はそこで藍染の嘘に気がつく。
先ほどのやりとりから、おそらく藍染はあの男が路頭に迷っていたのを救い上げ、そして家族を人質にとったのであろう。
つまり、藍染が言う「誠実さ」は彼が作り出したものだということだ。もとよりその人間の性格として存在していないものから
確固たる性格を作り上げることなど出来るわけがない。なら彼が藍染を裏切る可能性は十分に考えられること。そう
は冷静に思った。
しかしそんな簡単なことに気がつかない藍染か。そう思い巡らせば答えは否だ。なら、考えられることはただ一つ。
藍染は最初からこの拾った部下をなんらかの失態を口実に始末したがっていたのだろう。ただ、藍染の言葉を信じるの
だとすれば完全催眠とやらが自分に破られる事態は少なくとも、想定していなかったというのは真だろう。
だとすれば―――あのような事態になっても彼は助けに入らなかった。だが、自分が怖がったが故、そして完全催眠が
解けたという不遇に焦り舞い戻った。
自分のことなど微塵も、優遇などしていない。むしろ、それよりも残酷なものだ。

そういう解を吐き出して、なんとも、機械的な行動だ。そう思った。
だから、悲しくはなかった。
次に藍染が口にすることは大体、予想がついたから。


「生憎私も小者でして、・・・様が大嫌いなんですよ。 それは虫唾が走るくらいに。 少しでも貴女の傍にいたく
 なかった。
 なので―――信頼関係を築く過程は彼に任せました。 そして離れた場所から、ここの様子を監視しておりました」


刀に力がこもって、喉に食い込む。これで少しでも彼が引きさえすれば、鋭い痛みが恐怖のどん底へと誘うのだろう。
・・・だろう、・・・か。
藍染は憎いの、絶望に染まる瞳を期待しているのだろう。だけれども、その期待には応えられそうもない。
すまないな、と口を開くことは許されていないから、代わりに心のなかでそう呟いた。


「まぁ結局、彼は己の欲に負け、貴女との関係を一気に縮めようとした。 ・・・私にとってそれはそれほど問題ないのですが、
 なによりも・・・貴女が完全催眠から脱却したことは計画に歪みが生じる。 そして急ぎ、ここに参った・・・そういう経緯です」


刀の位置はそのままに。しかし藍染はそのまま身体を屈めて片方の掌での髪を無造作に掴み、ぐいと後ろへと反ら
した。白い喉が蒼い月光に浮き彫りになって、まるで何ものにも染まらぬ人跡未踏の雪山のようだ。その天辺には鏡花水月
が今か今かと、死の柘榴をばら撒く機会を伺っている。

そしてついに藍染は、の耳元で核心に迫った。



「何故催眠が解除されたのかは分からない。 が、斯様に瑣末なことは最早どうでもいい。
 
 さあ、吐け。 陋劣なる王族、

 ―――――― 『王鍵』はどこにある ――――――?」



ぐ、とさらに髪を絞られて、痛みに思わず声を上げそうになるが、唐突に今まで肘をついていた腕を上げて、刀を掴む。


「っ」


しかし無論数多の戦を抜けてきた男の前に女の力など無力で、ぴくりとも刀身をぶれさせることは出来なかった。だが、目的
はそうではない。掴んだそこを支えにして―――は反り返っていた喉を元に戻そうと足掻く。
長く黒い髪を指に絡ませている藍染はそれを防ごうと力を入れるが、


「こ、こう反ってては・・・はっ、話し、が・・・出来ぬ、だろ・・・馬鹿・・・もの、」


ただ単に喋りたくても喋れないと呻くの様子に少しばかりだが、力を緩めて言葉を待ってやる。軽く咳き込んだ後、
しかしはきっぱりと言い切った。


「私は逃げも隠れもしない。 だから、この手だけは離せ」


精神を切り刻むような言葉を浴びせたというのに、そう言って此方を見てくる目の前の女の瞳はなによりも澄んでいて
―――藍染の瞳が、不愉快に細められた。


「・・・さて、お主が聞きたがっていた情報だが」


そのまま、くしゃくしゃに乱れた髪に指を梳いて、綺麗にしながらはそう続けた。―――その様子は強がりでも
ましてや虚勢でもなく、ただいつもの―――日常会話かのような自然さで。指に注視するも微塵ばかりも震えていない。
声も震えていない。



ただ誇張することもなく、は諦めたような微笑をした。



この世のものとは思えない、限りなく透明で美しい微笑を――――――。






「―――最初に、言ったろう? ・・・『帰れない』と・・・」





刹那、藍染の空いた手に、力が篭る。




「すまないな、惣右介。 教えてやりたいのは山々なのだが、生憎私は『王鍵』の場所を知らぬのだ」




―――バシンッ、と軽い音が広い研究棟にこだました。



「君の家庭の事情など私には関係ない」



顔を思い切り平手で叩(はた)かれた衝撃で、首にはついに朱色の川が何本も出来る。しかしそこに触れず代わりに
じん、と痛む頬に触れて、はなおも気丈に藍染を見た。


「惣右介、聡いお主なら分かるだろう。 もう一度言う。 『帰れない』のだ」


「嘘を吐くな。 王族である君が、鍵の所在を知らない訳が無い。
 ・・・苦労して入手したこの禁書に記してあるのはあくまでも手がかりだけの情報しかなく、何の益も上げられなかった
 ―――そうなれば、如何なる手段をもってしても、君の口から訊くしかないだろう?」



即座に否定する藍染の眼鏡越しに見える目には蒼い炎が揺らめいているかのようで、彼のこの件に対する執着の
度合いを物語っている。

だが、は特になんとも思わない。だからといって無感情とか、恐怖の回路が欠落しているとか、そういうわけでは
ない。

先ほど、彼の部下とやらが迫ってきた時に―――恐怖は確かに産まれた。しかしそれは生理的な嫌悪で、彼が本物の
藍染によって刺された時にその感情は消えうせた。その後、いよいよ藍染に刀を突きつけられても、いくら精神的な蔑み
を吐かれても嫌悪や、恐怖は生じなかった。そう、それはあの本―――禁忌の研究が記されている本に目を通したときも
同じで。普通であるならその異様さに、狂気を感じて恐れるだろう。しかし、のなかにそのような感情は皆無だった。

何故?

藍染の長い『種明かし』の時間に彼の話を聞きながら、一方はその疑問を燻ぶらせていた。至極冷静に。
そしてようやく現在、得意の即演繹で解にたどり着いたところだ。



・・・出来ることなら、話したくなかったが。仕方ないか。
それに・・・少し、聞いてほしい・・・かも、しれない。どうか、この哀しいほどに『生きている』、この男に。



だから、はなんら臆することなく、生暖かい真紅に染まりつつある喉を震わせて言葉を紡いだ。



「『帰りたくない』の意での『帰れない』のではない。 本当に、『帰れない』の意での『帰れない』なのだ」



案の定、一度裂いたはずの部分にまた刀が当てられる。ちりりと鋭い痛みが新たに走るが、それでも恐怖は無い。
それならば、なお一層、やはり確信を抱いてこの男に教えたい。


「では、お主風に喋れば信じてくれるか」


藍染は何も応えない。その様子に安堵して少し笑えば、彼は不可解に眉根をわずかに顰める。おそらく、藍染は
恐怖の箍が外れては狂ってしまったのかと思っているのだろう。だが、無論そんなわけはない。
ただ、そんな様子すらも理解の範疇から外れていて―――藍染の心の内はなんとも楽しくない。


「お主は知る必要も無い相手に、将来脅威となるであろう情報を与えるか?
 ・・・そう。 私が王鍵の在り処を知らないのは、知る必要が無いからだよ。 道具としての使命を産まれ持った私には、
 そんなものは必要ない」

「・・・・・・・・・」

「私の足が弱いことを知っているだろう? そして賢いお主は、王族ながらにどうしてそんな状態なのだと勘ぐったときが
 あっただろう?」


何を思ったか分からないが、今まで押さえていた刀を―――今すぐにでも力をこめれば命など簡単に摘み取ってしまえ
る刀を―――自由にして、は話しやすいように腕を背にしている机に付きなおして、身を起こす。
―――なんだ、王族の愛娘は、ただの役立たずの木偶か。今すぐに殺すこともできるが、あるひとつの利用法を思い
つき、彼女の戯言を聞いてやってからでもその判断は遅くないかと思った。



「気づいているとは思うが、病というのは全くの嘘だ。
 
 わかるか?」



息を吐きなおして、は改めて向き直った藍染を見やった。




「簡単なことだ。 私の脚が弱いのは、弱いほうが都合がいいからだよ」




少し、昔話をしてやろう―――。




そう言って伏せた長い睫は、彼女の端正な顔に初めて蔭を凋落(お)とした。

どれほどの暴力、残酷な言葉を重ねても決して作ることのできなかったそれ。

己の力をもってしても、決して作り出せなかったそれ。

意のままにならない、万象を超越する力を持ち合わせる、気味の悪い愚劣な生まれの醜女―――に。






(――――――突きつけられている。)





自分が今、彼女に対して刀を突きつけているはずなのに、しかし確実に―――見えない巨大な刃が。
喉元ではなく、己が心の臓に、まっすぐに突き立てられている錯覚に溺れる。

紛れも無い事実に憎悪の火炎が音を立てて燃え上がるのが分かるが、今から語られる事実を把握さえすれば
いくら頑強なこの女の倫理も屈服できるかもしれない・・・そうすれば、この居合いにも決着がつく。

大切なのはいかにして間合いに入り込み、刃の隙を衝くことか。

わずかな瞬間を探りながら、藍染は暫しの『昔話』に耳を傾けるのだった。




































*********

*41話でした。
 「藍実食みて亞酔木煉せば」シリーズ第二話です。サブタイは「al decontrol」―――意味は「浄化する」です。
 ちなみに『亞』は本来なら『馬』なところなのですが、誤字ではありません。白という純粋で清潔な色を、無味
 で途方も無い永遠の底なし沼・・・・というふうにとららえたかったのであえて白を強調するために亞にさせて
 いただきました。
 34、35話「そして冥加者は天命に終止符を討つ」シリーズ(?)も同様に「討つ」は誤字ではありません、って
 こんなところで今更。笑 本来なら『打つ』なのをこの漢字にしたのは・・・・・・実は伏線なんです。この漢字を
 使う『討つ』は『討伐』の意味があり、そこに伏線が隠れてたりします。

 また、今タイトルシリーズ「藍実」ですが、藍実には浄化・解毒作用があるので使わせていただきました。しかし
 意味したことは、が浄化するべきなのは藍染の「完全催眠」ではなく、「馬(亞)酔木」ということです。
 言葉遊びは楽しいですが、文才がないのであいにく伝わりにくいという欠点がアイタタなかんじですね。とほほ。

*40話でに襲い掛かったのは実は藍染さんじゃなかったというオチでした。笑

 しかし本物の藍染はただを襲うだけなら別に研究棟にわざわざ戻るつもりはありませんでした。肉体関係
 をもつのはあくまでも自分ではないわけですし、結果のように性奴隷状態からの恋愛関係に束縛
 でき、王鍵のありかを聞ければ問題ないわけですから。


 しかし完全催眠が解けてしまったのはまずい。このままではいずれ野望に気づかれ、しかしこの幻用の男の根は
 優しいのでおそらくを脅迫し続けるには役不足。今までこの『優しさ』が仇になっていた部下は、藍染から
 粛清の機会を今までうかがわれていたのもあり、あっさり斬り捨てられてしまいます。

 完全催眠が何故解けたのかは分かりませんが、とりあえずこの男も始末し、脅迫という容にはなってしまったけれ
 ども、から究極目標の王鍵のありかを聞き出せる絶好のチャンスになったわけです。という流れでした。

 この主人公、とはまた違った能力があるようです。
 
 
*王族を激しく忌み嫌っており、しかもには変わった力があるので藍染さんは容赦なく冷酷なかんじで描いて
 おります。
 しかし・・・あれ、あまり冷酷じゃない・・・アレ・・・!?笑


*さて、次回は「藍実食みて〜」シリーズ第三話目です。絶体絶命な様のお命はいかに。
 そして様の過去が割れます。どうしてあの塔にいたのか?・・・ありがちなお話なのですがね。笑
 しかし、その暴露だけで物語りは終わりません。まだ伏線が隠されていますのでね。

 ではではー!







5:43 2010/03/23 日春 琴