第五十一話「照りつくす」
「瀞霊廷集合居住区、長屋拾ノ仇―――そこは俺達の家です。 そこには、千沙がいる・・・!」
浮竹は顔を合わせぬまま、静に焦っていた。
彼は、現段階では純粋に「千沙を護るために、現場に向かいたい」と言っている。だが、しかし―――その本意はそこだろうか。
先程の報告によれば、軍勢を率いている虚は東の辺境村を戦場へと化し不浄の地にしたことのある、十字傷を負ったものだという。
確か当時討伐に向かった五番隊の報告によればその虚の階級としてはアジューカス級だったはずだが、この何年間の間に虚圏で同士を
喰らってヴァストローデ級に進化していたとしても不思議はない。
いや、なによりも、辺境村が焼かれた悲惨な事件はここ何十年と起きていない。
起きたのは確か、日酉村という村―――相馬八峰の棲んでいた村。彼の憎しみの原点の地だ。
だがあまり悩んでいる暇はない。
その一体だけならまだしも、そいつはアジューカス級を何体も引き連れているらしい。あの村の惨劇が今再び、繰り返されようとして
いるのだ。発生した場所が瀞霊廷内であったのは幸いではあるが、それを差し引いてもこちらに利があるとはなかなか言えない状況だ。
少しでも指示が遅れれば、十三番隊だけでは事態を収拾できないかもしれない―――。
「千沙が危ない! いいや、千沙だけじゃない、周りの住民もこのままでは危険です! 隊長っ!!」
番傘を上げた太陽の微笑と暗黒の怒声が重なり、浮竹の額からつ、と汗が伝った。
【流星之軌跡:第五十一話「照りつくす」】
「・・・・・・・・・被害状況は」
「は・・・っ! 幸い長屋近辺にいた近隣住民は避難に間に合っており、無傷だそうですが、避難途中で怪我を負った者が二、三名いる
模様。 長屋住民は・・・残念ながら一番被害が酷く、交戦状態で安否の確認がとれていません」
依然、声を荒げる八峰に背を向けて浮竹はただ報告を延々と聞く。
「現在応戦中なのはどこの隊だ」
「管轄外ではありますが、偶然巡察の帰りだった九番隊の一部と、我が隊の一部です。 ですが、皆席官外ですので・・・突破されるのは
時間の問題かと・・・!」
「隊長! 浮竹隊長!」
「そうか。 ・・・我が隊からは俺と、そして―――志波隊を救援で送り込む。 それ以外は、各自――――――」
「―――隊長!! 無視しないでくださいッ!!」
しいん――――――隊長に今にでも食って掛からんとする八峰の怒号が張り詰めた空気を一気に切り裂く。普段声を荒げることも無く、
怒ることもない副隊長の姿に思わず皆が注目すれば、瞳の奥には今にでも爆発しそうな怒りの火炎がごうごうと音を立てているかのようだった。
得意の嘘も今は使えないのか、その色を惜しげもなく晒して、容赦なく浮竹の背に向けていた。
最早叫びともとれるような八峰の声に、思わず浮竹の装っていた冷静さは揺らぎ、淡々とした指令は一旦止むことを余儀なくされてしまう。
一触即発の状況に、皆が固まった。
「俺を―――俺を、同行させて下さい!」
「・・・・・・・・・」
「浮竹隊長!!」
「・・・・・・っ!」
どたどたと床板を踏みしめ、足音は浮竹の背後まで来てぴたりと止まる。後ろから殺気ともとれる強い思念が嫌でも伝わってくるようで、
ついに浮竹は長年心のうちに留めておいた本音を吐露してしまう。
「・・・憎悪でもって振るう力は結果的に良い方向へとは転ばない。 復讐剣に、何をも護れる力などありはしない」
後ろを振り返って、ようやく浮竹は八峰と真摯に向き合った。そして、怒りに燃える八峰の瞳と瞳を克ち合わせて、なんとか説得を試みる。
「相馬。 お前の心は今、千沙さんのことのほかに―――村を奪った虚への莫大な憎しみが占めている。
・・・そんな者が戦場でまともに戦えるものか!」
周りのものは八峰の身の上の情報を知らないが故に置いてけぼりを食らったかの様子であっけにとられているようだったが、二人のただならない
様子に何か深い因縁めいたものが街を襲っている虚の大群と副隊長の間にあることだけは理解したようで、誰もが仲裁に入れる空気ではなかった。
それは事情を知る海燕も同様で、ただ二人の譲れぬ駆け引きを見守ることしかできなかった。
浮竹のその言葉を聴き、ついに八峰のなかで何かが切れて―――自隊の長である浮竹に詰め寄った。
「隊長に・・・っ、隊長に、俺の本心がわかるっていうんですか!?」
「・・・・・・っ」
「俺はこのために・・・千沙や民を護るために強くなった。 肉体的にも―――・・・精神的にも!
浮竹隊長、これは俺の心を・・・誇りを護るための戦いです! 行かせてください!!」
浮竹の目の前からふっと八峰の姿が消える。気がつけば彼は床に額をめりこむのではないかというくらいに擦り付けながら、土下座をしていた。
必死なその姿は、まだ彼がこの隊に入る前―――そう、十三番隊に潜入して浮竹の前に転がり込んできた時の姿と酷似していて。そういえば
あの時もそうだった。「娘のために生きたい。娘のために生きねばならない。そのために護廷隊に入隊させてくれ」と―――そう八峰は懇願し
ていた。
先日見たあの向日葵のような笑顔と、反芻してきた言葉が重なり、もしかしたらもう復讐の影などとうに吹っ切れているのではないかという
明るい期待に胸がぐらつく。八峰の言うとおり、心がわかるわけでもないし、本当なら信じてやりたい。信じて、千沙を助けに行かせたい。
だがしかし、やはり冷たい炎の薄気味悪さが脳裏にちらつく―――。
「時間がありません。 浮竹隊長、ご命令を!」
廊下に控えていた隊士に促され、ようやく浮竹は遅い命令を出した。
「――――――・・・・・・救援には、志波隊、及び―――・・・相馬隊を派遣する。
ただし、俺の隊も一緒だ。 ・・・それで、良いな? 相馬副隊長」
背中越しでもわかる感極まる八峰が目に映る。声を震わせて、これから出撃だというのにもかかわらず安堵の息を漏らしながら、必死に礼を
口にする。もしかしたら涙さえ流しているのかもしれないと思ってしまうくらいに、八峰は感動していた。
そんな様子を見て、海燕は何が何でもこの人を護らねばならないと気を引き締めながら、ほっと一息ついていた。この判断、実際浮竹にとっては
かなりの心労になったであろう。浮竹や自分が抱えていた一番の心配事をわざわざ危険に晒すのだから。
だが、この一事件さえ超えてしまえば八峰にとって大きな試練を乗り越えたことになる。そうすればあの不可解な危うさなど微塵もなくなるに違い
ない。
―――彼はこの事件で、過去の自分から決別するのだ。
大丈夫、相手は強豪揃いだとはいえ、十三番隊からは副隊長も、そしてなにより隊長も出撃するのだから心配事は何もない。
「では隊長。 我々も出撃を―――・・・」
しかし、海燕が浮竹に話しかけたその時だった。
「・・・っ、ぐ、・・・!! ゲホッ、げほっ・・・!」
「たっ、隊長――――――!?」
急に浮竹の足元がおぼつかなくなり、そのままがくりと地に膝を折ってしまう。慌てて海燕はかけよると、彼の一番近くで伏せていた
八峰が身体を支えてくれていた。背を何度も擦りながら、懐から何枚もの懐紙を差し出して。
「げほっ、ゲホッ、・・・うぐ、・・・がッ、ハ・・・ッ!!」
気管をせりあがってきた生暖かい液体をやっとのことで吐き出せば、それは真っ赤な鮮血で。そういえば何週間か前までは肺の持病で
床に伏せていたのだった。
しかしそれが今という緊急事態の時に限って再発してしまうなんて―――!
浮竹は悔しさと焦燥に、歯を食いしばる。白い歯列にどろりと絡みつく緋色が口の端から滴れば、それは己のふがいなさへの怒りを
なによりも表現しているかのようだ。だが浮竹の思いに反して次から次へと咳は出て、鉄臭い液体が逆流する。悪寒は増し、意識は
朦朧としだす。こうなったらあとはおとなしくしているしかない。とても戦いになど―――・・・ヴァストローデ級を相手どる
どころか、下級虚すら相手どることなど出来ない。
途端、心配した隊士たちが詰め寄ろうとするが、
「浮竹隊長、」
八峰の声だけがやけに響いて、彼らの足はぴたりと止まった。
「隊長はこの隊の要です。 貴方に倒れられては困ります。 だからここで、休んで待っていて下さい。
・・・・・・大丈夫。 必ず、勤めを果たして――――――帰ってきますから、隊長――――――」
先程まで浮竹に食いかかろうとしていた彼の声は何よりも、優しくて柔らかだったのだ――――――。
***
夏の空は低くて蒼い。そしてその様は、まるで少女のようにきらきらと輝き、ころころと移り気で、ぐずぐずと不安定だ。
遠くには真白い入道雲がもくもくと上がっている。蝉の鳴き声が煩い。遠雷は聞こえないか。夕立はまだか。
雨が降る前に、早く帰ってこないものか。
こうもなかなか雨の気配がしないということは、あの雲はもしかしたらあの者達が戦っていて、その煙なのではないか・・・・・・。
普段は憂鬱にさせるだけの雨が、今だけは何故だか恋しかった。
熱気にあてられたのかと気を利かせた隊士が持ってきてくれた冷水を含ませた拭いを額に載せて、浮竹は道場に敷いた布団の上で
静かに寝転がっていた。あれからというものの、少し横になっていればなんとか発作はおさまって、しかしまだ身体は気だるくてたまら
なくて。少し回復したというものの、とてもではないが戦いに赴ける状態ではなかった。だからこそ歯がゆくて、戦況が一層気になる。
何しろ相手はヴァストローデ級とアジューカス級の軍勢だ。最低でもギリアン級の大群が暴れまわっているというのだからいくら優秀な
救援隊を送ったといえど、梃子摺るのは間違いない。先刻追加要請で十番隊にも応援を頼んだが、それでも厄介な相手であることに
変わりはない。
奴らは村一つを一夜にして破壊しただけでなく、様々な『負の思念』を浸透させて以降千年もの間魂魄がまともに生活できることのない
不浄の地へと化してしまうだけの力をもっているのだ。予想される未来ではなく、理論上ではなく、間違えなくそういう実績を持っている
のだから余計に不安にさせる。
気に掛からないほうがおかしかった。
だからこうして―――一番門に近い、道場の縁側に横たわって、彼らの凱旋を何よりも心待ちにしているのだ。
身体の底から這い上がってくる寒気を押し殺して、薬の副作用に頭をぼうっとさせながら浮竹は硬く閉ざされた門を見る。
―――と、その時、ぎいいと大きな音を立てて門が開かれて。
「!」
浮竹は、目を丸くした。
そこにいたのは待ちに待っていた、志波隊や相馬隊の面々ではなく――――――。
「浮竹隊長、こんにちは」
現在、戦闘区域真っ只中にいるはずの、相馬千沙だったのだ。
「・・・? なんだか今日は、隊士さんたち少ないね。 皆、お仕事忙しいの?」
「な・・・」
「隊長さんは、今日もご病気のなかお疲れ様です。 おからだ・・・大丈夫?」
浮竹の開いた口が塞がらない。
目の前の門から歩み寄ってくるおかっぱは間違うことなくあの相馬八峰の愛娘である、相馬千沙だ。
相変わらず最初はおずおずと入ってきて、浮竹との距離が縮まれば縮まるほどその緊張した面持ちは解かれてゆく。そんな
彼女は今の長屋の状況を知っているのか、はたまた知らないのか、やけに飄々として―――いやむしろ、普段どおりの態度でもって
こちらに歩み寄ってくる。
「なっ・・・何故、千沙さんがここにいるんだ!?」
「えっ?」
最早頭の中で整合性は取れなくて、訳がわからなくなった浮竹はがばりと上半身を床から起こして、だがやはり身体は辛い
ものだから片腕を付きながら千沙を見やりながらそう叫んだ。
千沙はそう言われてようやく浮竹の表情が何か、恐ろしく強張っていることに気がつく。そしてよくはわからないがその必死な
形相に、何か大変なことが現在起こっているであろうことは推測がついて、思わず黙りこくってしまった。
「今朝、君の棲んでいる長屋付近に大虚の大群が発生して―――千沙さんがその長屋にいると思って、助けたいと―――
八峰は、千沙さんを助けるために討伐に向かったんだ。 まだ避難命令は解かれていないはず・・・。
それなのに、どうして、君はここにいるんだ」
「ちょ、ちょっと待って・・・!」
千沙は捲くし立てて話す浮竹のいきさつに違和感を感じ、彼を制止する。
「私、昨日、今日は流魂街のお友達の家に遊びに行くって父さんに言ったよ! 今朝も家を出るときに、もう一回言ったの。
父さんが心配しないようにって・・・・・・! だから父さんが今日、私が家にいないことを知らないわけがない!」
「―――――――――っ!!」
眉根を下げながら訴える千沙。彼女の目には嘘など微塵もなくて、その事実の真実味を裏付ける。
刹那――――――すべてが一つに繋がり、八峰の本意を悟った浮竹の全身に、絶対零度の電撃が走った――――――。
浮竹は、思い出した。
彼の異名が『空纏』だったということを。
大切なものを護るためになるのなら、彼はどんな嘘さえも完璧に、完膚なきまでに、吐いてみせるのだ。
だが、それは違うだろう。相馬八峰よ。
お前が大切なのは、お前が本当に護りたかったものは娘であって、復讐ではないだろう――――――。
浮竹は、叫びだしたかった。
彼の嘘を、見抜けなかった自分の不甲斐なさを嘆いて。
そう八峰に叫びたくとも、叫んでも叫んでも、喉を張り裂いて叫んでも、届かない場所へ追いやったのは紛れもない自分だ。
大虚を引き裂く刃の音と、命をやりとりする戟の音、轟く阿鼻叫喚の絶叫の嵐の中で、いくら声を張り上げても掻き消えてしまう。
彼の嘘はいつしか彼自身の心も欺いてしまう時がくるのではないかと、あれほど危惧していたのに――――――
『娘のため』と吐いた一世一代の嘘を見抜けなかったのだ。
偽りの太陽はついに相馬八峰を照り尽くした。彼は彼自身を、嘘で塗り固めて、いつしか本当の自分に還れなくなっていたのだ。
浮竹は、すべてを理解した。
八峰は千沙が長屋にいないことを、千沙の安全を知っていながら討伐隊へ志願した。それは何故か。間違いなく―――・・・
『復讐』だ。
隊士からの報告を粒さに聞いていた八峰は、額に十字傷を負った虚がかつて自分の幸福を悉く奪っていった虚であると断定した。
彼は「千沙のため」といういかにも浮竹が好みそうな理由を身代わりにして、しかしその実、千沙の無事を知っていた彼は復讐を
遂行するために戦地へと赴いたのだ。
彼の心から『復讐』の二文字は消えてなどいなかった。むしろあの嘘が咄嗟に出てきたという事実から、村が壊滅したあの日から
どんどんと鮮やかさを増していったような気すらする。
幸福が一つ増えるたび、それを護るために一つ、嘘を吐く。
一つ、また一つ。毎日が幸せの連続で、嘘は最早過大に成長しすぎた。彼の本意は娘を護ることであろうに、ふくよかに育った嘘の
太陽は彼自身の目を眩ませたのだ。
ああ、どうしよう。一番恐れていた事態になってしまった。
何も言えずに硬直する浮竹を見て、幼心に千沙も何かを悟ったのだろう。彼女はそれ以上なにも言わずに、ただいつものように
ちょこんと浮竹の隣に座って、空に浮いた足をぶらぶらさせて、俯き、沈黙する。
カチ・・・、カチ・・・、カチ・・・、
後ろでゼンマイ仕掛けの時計だけが、何事も無かったかのように一人時を刻々と刻んでいる。
・・・そういえば、もうすぐ定時だ。
もうなにも言えなくて、浮竹は布団から抜け出て千沙と一緒に縁側に座る。
しかし、一緒に向かった隊のなかにはあの志波海燕がいる。彼も浮竹と同じく、八峰を監視していた一人だ。彼がむざむざ八峰を
危険な目に合わすようなことはさすがにしないはずだろう。それだけが今の唯一の希望だった。
だが、定時を過ぎても、彼らが帰ってくる気配はなかった。
あれだけ青かった空に茜差す時刻になっても、蝉が声を潜め、涼風が足元を掠めても、帰還どころか戦況の報告も一切無かった。
ぽつりと、千沙が呟く。
「・・・知ってる?」
浮竹は千沙の声に耳を傾けた。
「父さんはいつも嘘をつくのよ。 私に心配させまいって」
その声は笑っていた。
「だから、今回も嘘なのよ」
それが、幼い彼女の精一杯の強がりだということも、すぐに理解できた。
「『千沙を護るため』、なんて嘘!」
吹っ切れたかのように、諦めたかのように、軽やかに笑う。
「いつも言ってた『帰ってこない』なんて、嘘だし!
・・・『桜花苑』に連れて行ってやらないぞ!って常々言ってたから、それも嘘だから、だから・・・」
横目に見やれば、彼女は空を見上げていた。まだどこかで、死に物狂いで虚と戦っているであろう父も、この空の下で
繋がっていると、せめてそう思いたいのだろうか。そう思うと切なくて切なくて、やるせなくて。
浮竹は地を見つめるしか出来なかった。
「だから・・・・・・っ!」
声が詰まる。彼女がどういう表情をしているのかなんて、見なくても解かった。
「だから・・・! 『帰ってこない』なんて嘘なの。 仇の虚を・・・母さんを奪った虚を倒して、絶対に連れてってくれるの、
生きて帰ってきて、絶対に、絶対に・・・!」
とうに定時は過ぎた。あたりは茜を通り越して深い藍色が世界を覆い尽くそうと迫ってきている。
逆光に隠されたおかっぱはついに震えだして、それでも強がって、声を殺して。
泣きじゃくる幼子に気の利いた言葉一つもかけられず、ただ哀れむしか出来なかった。
八峰は―――君の父上は、君を大切に思うあまりに、復讐に囚われてしまった。
君が大切で大切で仕方なくて、君を護りたい一心で、嘘に飲み込まれてしまったんだ―――・・・。
そう口にしたくても、最早千沙にとっては何の意味も成さない。
彼女にとって意味を成す唯一のものは、もう―――・・・・。
咽ぶ声に蜩の鳴き声が重なる。茜はそんな声など聞きたくないと、すぐに去って逝った。
やがてすべてが暗闇に覆われる。輝きだす月だけが禍々しいほどに大きくて、――――――哀しかった。
続
***************
*51話でした。いかがでしたでしょうか。・・・察しのいい方にはもう先の展開が見えてるはずですね。笑
*本文にもありましたが、八峰は娘である千沙の身を案じるがゆえ、そして大切な仲間が出来たがゆえに、
それらを失うことに過剰な恐怖心を抱いていて、その心を薄めるために嘘を纏い、嘘つきになってしまった
という経緯があります。
そして過剰になりすぎた嘘つきは、いつしか彼の本心までをも欺くことになり、復讐の鬼になってしまった
ということです。むしろ、十三隊に潜入した直後のほうが冷静な心を持っていたということになります。
十三番隊に所属して沢山の幸せを手に入れたからこそ、今回のような悲劇が起こってしまったといっても
過言ではありません。
幸せゆえの悲劇―――これは浮竹ルートの一貫したテーマにもなっております。そして、誰かを護るための
嘘、というキーワードも同じく、浮竹ルートのテーマのうちの一つです。
これは藍染ルートではありますが、藍染ルートだからといって藍染さん一人で世界が回っているというわけ
ではないのです。あくまでもこの連載は、「藍染&浮竹長編夢連載」なので。笑
・・・勿論、最終的なオチは片方ですがね。ご安心ください。
*さて、急展開を見せる八千代編ですが、一体これからどうなるのでしょうか。
海燕さんは無事、相馬副隊長を護りきるのでしょうか。
これは47話「無花果―――悲劇の始まり―――」と密接に関係しているだけあって、オリジナル要素が強く
ても大事な局面になってきます。
つらい描写が続きますが、どうか応援くださいませ。
*それでは!
3:58 2010/09/18