第六話「墜―後編―」
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まるで何か実験の対象を見るかのような軽薄なまなざしで──冷たい指先で、肢体をまさぐる。


「てっきり自分好みに育て上げ、とうに抱いたと思っていたが、傷一つない──…綺麗だな」


そうして藍染の指が胸に差し掛かった時───のことを反射的に思い出したのか、
は藍染の手を掴み、激しく拒否を示した。


「嫌ぁあぁっ!やめてっ!触らないでッ!!!」


そのまま手を払いのけ、力の入らなくなった身体をずるずると引き摺り、逃げようと這いつくばる。
しかしここは狭い地下室──すぐに壁際に追い詰められる事は必至だった。


「何故逃げるんだい……」
「嫌だ……ッ!来ないで──」



壁にすがりつくようにして藍染を恐怖の瞳で見上げるが──
それすらも、今の藍染にとってみれば快楽になった。
の恐怖の色に染まった涙を瞳に留める度、ゾクゾクと背中に心地よい虫酸が走る。


「こういうことは、浮竹に習ってなかったのか?」
「───いやぁあぁあっ」


がしり、と、藍染のごつごつとした大きな掌が、露になったの肩に回される。


「教わったんだろう?斬拳走鬼も、物をあらしめる名も、この世の道理も……口ではいえない男女のまぐわいも──
─この身体に、教え込まれたのだろう?」
「わ、私っは……ッ」
「教えてもらっていないのなら──私が教えてやろう。元々、お前の親は私なのだから──」


そう妖しく微笑めば、手は残酷に衣服を剥した。
そして抵抗する彼女の手首を解いた帯で鬱血する位に縛り付け、壁の手摺にくくり付ける。


それでも───は、健気に叫んだ。
それは最早──彼女の意地だったのかも知れないけれど。


「私の親はっ……ッ!十四郎様ただお一人だけっ……!貴方なんかじゃないッ!」
「────」


涙でぐしゃぐしゃになった顔に、彼女の美しい黒髪が映える。
───それは、持ち主の気丈で純粋な性格を表すかの如く、気品高く美しい。


だからこそ────藍染の加虐心をくすぐるのだ。


「そうか……親、か……」
「………ッ」
「親、ね」


はぁはぁと目一杯呼吸を繰り返すの顎を手に取り、ぐっと無理やり上を向かせ───至近距離で囁いた。



「今まで散々お前を利用してきた奴のことを──親と、お前は言うのか?」
「……!!」
「だとしたら、健気だな。いや、むしろ馬鹿か。
……対人恐怖症から立ち直った人物は大抵、その道を更生させてくれた人物を慕うようになる。
まるで生まれたての雛が一番最初に見た鳥を親鳥と認識するように。
……義理堅い人間に『させられた』お前は、疑いもしなかったのだろう?」
「や、め………て……言わ、ない……で……っ」
「孤児のお前をわざわざ拾って育て上げたという偽りの過去で恩義をお前に刷り込ませ──
挙句お前を利用したということを!」
「嫌ぁあぁあああッ!!!」
「聞け、!!浮竹達はあの優しそうな仮面を付けて、お前の能力をただ利用してやろうとお前に偽りの愛情を
注いで来ただけなんだよ!!」
「嫌───────……!!!」









手で顔を覆って、は泣きたかった。
見られたくなかった。
今まで浮竹を信じ、その自分をまた信じてきた自分を。
そして、かたくなな決意を、こんなにもたやすく藍染に崩されてしまった自分を。


見ないで。誰も、見ないで────。



しかし、それすらも今や縛り付けられている彼女には叶わない。



この男の前では───全てが、暴かれてしまうのだ。



「そんなのが親と呼べるか……?それでも浮竹を親と呼べるか……?
それよりお前の能力を活かしてやろうとしている私の方が───もっと、『親』なのではないかな?」
「─────」



そのまま、勝ち誇ったかのように、藍染はに深い口付けをする。
息も出来ない位に、荒々しく。
時折の舌を噛み切っては血を滲ませながら、それすらも惜しむほど彼女の唾液ごと啜る。


は、拒む事無く───ただ漠然と、されるが儘だった───。


「最高だな……その絶望に駆られた顔は。もっと見せてくれ───」


これから何が始まるのか、にはわからない。
こんなこと、浮竹からは教わらなかった。


首筋には藍染の唇が痛みを作りだし、乳房は痛い程に揉みしだかれている。




わからない。



わからない───。




わからないこと、だらけだ。




ただ、わかることは────



「もっと良い声で泣くんだ……───」



藍染の、非道に満ちた顔と。



「いやっ……あ、あっ……はぁぁ…ァ…んッ!」




自分の、まだ未知数の快楽に溺れる声と。





「あぁッ……じゅ、しろっ……さまぁ───…ッ!」




ダレカノ────浮竹に助けをを求める、声。
そして、それを止める事なく───



「もっと叫べ!…もっと──助けを呼ぶが良い、────」



何度も、何度も、自分の名を執拗に囁く藍染の声と。




「あっ、あっ、あ────」





ガンガンと、何度も貫かれる───初めての痛みと、とてつもない快感と───嗚咽感。









─────あぁ、





私は墜ちたくないのに。











───墜ちてしまったのだ。










翌朝──
一糸纏わぬ姿で倒れ込むの下腹部からは、白濁とした液と多量の透明な液──そして、真っ赤な、真っ赤な血が──


地下室の色となって、の存在をあらしめていた。
















「あ、藍染隊長!調べものは終わったんですか?」

「やぁ雛森君。そうだね、調べものは無事、終わったよ───現世での記録は全て調べあげて、順調にいっている。全て───」





















僕の、思惑通りに────ね。
















くるり ひらり


舞い落ちた 天使の羽


泣き叫んで 懇願して


毟り取られて 千切れて


血糊で変色した 真っ赤な、真っ赤な 羽



私はそれを恐れている



なのに 貴方は 


残酷に 笑って


それを綺麗だと 言うの





血と涙にまみれて 痙攣し


涎を垂らしながら発狂する



アノ天使────



嗚呼 私はそれに なりたくないのに











─────墜ちて、しまった。













泣いても 叫んでも




誰も 助けなんか 聞いてくれない





だって私は 親鳥に愛情を見放された 小鳥なのだから







そうして切り取られた






私の存在は















ひとりぼっち。
























かごめ かごめ


かごのなかの とりは


いついつ でやる


よあけのばんに


つると かめが すべった


うしろのしょうめん


だぁれ───────?











───────


山場一個終了〜っ!です、はい。

痛くなりました。そしてグロいです。


あまりエロスはないですが、やるとこまでやっちゃった感は表現中に混ぜておきましたんでお許しをば!


というか……あんなに黒くしてしまってよかったんだろうか、藍染隊長(笑)
いや、言葉攻めは間違えなく私の性格が降臨してしまったためかと思いま(こらぁ)


イメージではもっとグロかった(の血やら嗚咽物を美味しそうに舐め、キスをする藍染とか)のですが、
さすがにバイオレンスなのでやめまちた(てへっ)←ぅへぁ


現世にてがフェンスとか見て郷愁を感じたりしたのは間違えなくだからです。


あと、お夜食とかは…。
雛森はちゃんと持っていったのですが、その藍染は偽者──幻覚藍染だったというオチでございます。


哀れ、


しかし、どうやって十二番隊からを浮竹が奪ったのかとかも書きたくなってきちゃいましたよ〜っ!
また八方塞がりです、はい(笑


では、今回は長くなってしまい、申し訳ありませんでした。


失礼致します。







分からない方のため要約すると……



は、藍染の実験の対象として、藍染によって斬魄刀の能力を付加された魂魄。
今までは自分の透視能力を記憶喪失前に解放したであろう自分の斬魄刀の能力と思っていたが、
それは間違えで自分自身の力だった。

また、能力を使えるは人間でもないが、死んだ記憶はない(実際は死んでいるのだが。死なないと斬魄刀の能力は使えないため)
よって虚でもなく、人間でも、死神でもない存在がだった。


護廷十三隊はが更木以前(更木時含め)の記憶を喪失してるのをいいことに、
の透視能力を利用するため、もしくは監視のために彼女の保護を決定。
浮竹は時代のことをに一切教えないで、あたかも昔から流魂街にいた孤児、とのように覚えこませた。



ということです。


わかりにくい箇所ありましたらブログなどにコメントどうぞ〜。